パンおじさん
弓道部には夜になるとあだ名の変わる人が居る。水野寮助、ロリコンであることからロリティと普段は呼ばれている。
「今日の練習を終わります。礼。」
「「「ありがとうございました。」」」
「部活終わったー!」
サボり組が遊んでいる中、水野は自分の鞄へ走って行く。するとその後ろを北村と平沼が走って付いて行った。
「パン今日何がある?」
「えっと、カツサンド、卵サンド、モチモチクルミパン…やね。」
「俺カツサンド欲しい。」
「俺は卵サンドちょうだいや。」
「向こうでね。卵サンドは俺が食うけえだめ。あとカツサンドは中の3つを3人で分けてね。」
彼は夜によくパンをレギュラーにあげているので、レギュラーからパンおじさんと呼ばれている。パンを配るのは彼の母がコンビニで働いており、賞味期限ぎりぎりのパンを持って帰り、彼の家で食べきれないパンをみんなに分けているのだ。ちなみに、彼の母の働く日の都合上パンおじさんの定休日は月曜日と水曜日だ。
レギュラーが集まっている所まで行くとすぐに水野が言う。
「カツサンド欲しい人手上げてー。」
「「「「はい!はい!はい!」」」」
すぐに食いしん坊達が手を上げ始める。
「じゃあジャンケンして決めろよ。」
するとカツサンドが欲しい人が集まりジャンケンをし始める。
「クルミパンが欲しい人-?」
「「「はい!はーい!」」」
「ジャンケンで決めろよー。」
そう言ってパンを置いて帰っていく。彼は電車の時間の都合上早く出ないと間に合わないのだ。
水野が帰った後、カツサンドが欲しくて集まった4人が言い争いを始めた。
「お前昨日食べたやろうが!」
「お前もやろ!」
「俺一昨日はもらってないし!」
「俺昨日食べてないけえね。」
「お前はあげるけえちょっと待て!」
「俺を無視せんでよ!」
言い争いは次第に2人の取っ組み合いのようになり、カツサンドを持った人が言い争そっていた相手から遠ざけて遠ざけている人以外の人達と食べようとすが、それを必死に奪い取ろうともう1人がする。いつもの見慣れた
光景だ 。やがてそれは終息し、ジャンケンで結局決まった。奪い合いはただのおふざけであることが多い。たまに本当に食べるのだが…。
一方、クルミパンが欲しくて集まった3人は話し合いをしていた。
「どうする?」
「三等分にしようや。」
「それでいい?」
「俺はいいよ。」
「俺も。」
「じゃあ三等分にするよ。」
こちらは平和的に毎回決めるのだ。奪い合いがこちらでは起こったことはない。
ちなみにパンおじさんは電車の中で一人平和に卵サンドを食べていた。彼は彼のあげたパンで起きた争いを知らないのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます