第四短編 堕落
最初は楽になりたい。それだけだった。学校では友達と上手くいかなくて、家では親は喧嘩してばかりだった。そんな日が続いて僕は心底疲れていたのだ。
そんなある日に、散歩をしていたら向こうから歩いてくる人に見覚えがあった。誰だと思い、チラッと顔を見るがやっぱり思い出せず、そのまますれ違うと後ろから声を掛けられた。
「やっちゃん?」
そう話し掛けられ、僕は思い出した。僕をそう呼ぶのはただ一人。
「もしかして、ぶー?」
そう返したら彼は笑いながらうなずいた。
彼は小学校の頃の親友で、中学に上がる頃に東京へ引っ越したのだ。かなり太っていたからぶーと呼ばれていたが、今の彼はその面影は無く、やせていた。気付かないわけだ。しかし、彼の優しい顔だけは当時と変わっていない。
久しぶりに会った僕らは今までの事を語り合った。楽しかった事、辛かった事。友達の愚痴や親への文句。全てぶーにぶちまけた。
「これやるよ」
そう言われて、白い粉を渡された。何だか嫌な感じがすると彼に返すが、押し返された。これは量を間違えれば劇物になるけど、間違えなければ楽になるからと。その言葉に惹かれてしまい、僕は結局それを受け取った。
ぶーに量を調節してもらい、試しに吸ってみる事にした。片鼻で一気に吸い込めと言われ、粉に鼻を近付け一気に吸い込んだ瞬間、頭の中が鮮明になって今までの悩みがどこかに行った。しかし、ぶーと別れて家に帰った時、薬の効果が切れて急に身体が重くなった。
それが辛くて貰った薬を少量取り出して、また吸い込んだ。身体が軽くなって気分爽快だ。
それから、何かと理由を付けて薬を使い続けてあっという間に手元に無くなってしまった。身体が重く、世界がぐるぐると回る。ぶーに薬をくれと連絡するとこの間の所に来いと言われた。
僕は身体を引きずりながら、ぶーの元へ向かう。
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