Club Fantasista 808 地獄の門を抜けてすぐそこ

高橋留美郎

プロローグ

エルフ、リザードマン、サキュバスたちがフロアから、僕を奇異な目で見つめている。

彼らの期待とお前なんかにこのフロアを盛り上げられるのか、というような挑戦的な視線が僕を刺していた。


「おまえさん、曲はなんのデバイスでかけるんだ?ここにID打ち込んでくれ。お前さんのクラウドの曲をかけられるぜ。」


双頭のDJが僕の目の前に浮かび上がるモニターを指差した。


「えーっと、IDとかはわからないんですが、この中に曲が入ってます。」


僕は首から下げていたUSBメモリーを彼に渡した。


「USBメモリー!?超古代のテクノロジーじゃないか。おまえさん古いものにロマンを感じる派!?まぁ、これでも読み込めないことはないとは思うが。」


USBメモリーを彼に渡し、機材にUSBを置くと『データ読み込み、完了』の文字がモニターに浮かび上がった。


「お、無事読み込めたみたいだぜ。じゃあ、お前がかけたナンバーでフロアをぶち上げてやれ。がんばれよ。」


機材の上にディスプレイが浮き上がっている、

僕はこのフロアで何が盛り上がるかをぐるぐる考えながら曲を選曲した。

コスプレイヤーが多い…ゲームか、アニソン、なにかボカロこの場所にあった選曲はなにか…。

青白く光るLEDの床や、スターウォーズのように色々な種族が入り乱れる宇宙船のなかのようなフロアを見て思いついた。


僕の前にプレイしていたエルフのDJの曲が終わり、フロアに静寂が訪れてしまった。


「おいおい!曲止めるなよ!!」オーガのコスプレをしたごつい男がイライラしたように声を荒げた。

や、やば!!どうにかしなければ。


「マイクってありますか?」


僕は双頭のお兄さんに声をかけた。


「あぁ、あるぜ!挨拶でもすんのか?」


「ちょっと曲の紹介を。有名な曲なので必要ないかもしないですけど。」


双頭のお兄さんは僕にニヤッと笑うと「ほらよ!」とマイクを僕に放り投げた。


「みなさん、こんばんは!飛び込みで参加しました。今夜は最高にかっこいい曲を皆さんにお届けします!」


「Tank!!!」


僕は勢い良く、機材の再生ボタンを押した。


それと同時にホーンセクションがクールに鳴り響いたあと、

ウォーキングでウッドベースがクールに響きながら、パーカッションが追いかけてくる。


「この楽器はなんだ?こんな音楽聴いたことないぞ!?」


「でも、めっちゃかっこいいじゃん!」


先ほど、イラついていたオーガのお兄さんが両手を挙げ、サキュバスのお姉さんがポールダンスで踊リ始めた。

さて、次の曲は何をかけようか。でも、そんなことより早くエレンのイベントに行かなきゃ。

人間以外が盛り上がるフロアを見つめながら、頭を混乱させながら考えていた。


なんでこんなことになったんだっけ。

僕はここにくるまでの経緯を思い出していた。

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