颯爽と

 街を歩けば、誰もが私を振り返る。

 真面目な顔したサラリーマン。

 初心なフリした学生男子。

 誰だって、私に視線を向けずにはいられない。

 

 だいたん胸開き肩出しニット。

 太もも食い込むパンツはホット。

 季節なんてカンケーない。私、いつでも挑発的な小悪魔よ。


 かき上げる髪はアッシュブロンド。

 シャドウは今ならパールがトレンド。

 ラインは細めに抑えているけど、

 リップは赤、チークも派手に、これは絶対ゆずれない。


 さあ、

 駅前から広場を抜けて、

 大通りを颯爽と歩いて、

 ブランドショップのショウウインドウの前を通る。コーヒーショップのギャルソンも、三つ星ホテルのドアマンも、レストランのウェイターも、屋根の上からロシアンブルーも。

 誰もが私に釘付けよ。

 

 これが私の快感なの。

 見られることで、美しくなれる。

 

 木漏れ日のあふれる公園で、さえずりを乗せた風を聞きながら。

 私は歩いた。

 すると、また1人。

 ベンチに腰かけた少年が、私をじっと見つめてる。うふふ、可愛い子。

 悪戯心、私は少年の隣に座って足を組む。

 そしてウインクしてから微笑んだ。

 すると彼はこう言ったの。


「いや、せめてスネ毛は剃れよ」

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