第16話 父のわがまま……。(8)
部屋の入り口で室内にいる五人の物々しい様子を呆然と佇みながら凝視していた僕に気がついた看護師さんの一人が声をかけてきたのだ。
それも大変に困ったような表情。そう相変わらず幼子のような振る舞いで我
儘……。今直ぐ退院をさせて欲しいと、主治医の先生や看護師さん達へと無理難題を告げている。家の父に対して困っているのだ。
と、言いたいような顔色で看護師の彼女は、父の息子である僕へと呼びかけてきたのだ。
……だけでなく。
今度は他の看護師さんが。
「息子さんからも、お父さんへと何とか言ってあげてください」と。
荒々しく告げてきたので。
「えっ?」と僕は、思わず声を返してしまった。ついついとね。
だって病院内の廊下を歩いきながら父の部屋へと向かっていた僕の耳に、いきなり入ってきた。我が家の父の荒々しい台詞──。
だから僕は慌てて、院内を走ることは禁止。いけないことだとわかっていても。僕は駆け足で扉が開いたままの状態になっていた父が入院する部屋へと飛び込むと。
そこには? 入院患者用のベッドの上で、自身の横なっている身体を強引に起こし。ベッドから降りようと試みる父のことを取り押さえ──。再度ベッドへと寝かそうとする主治医の先生や看護師さん達の姿……。
そう、家の父を含めて、物々しい様子の五人の姿がそこにはあったので。僕自身はついついと困惑、呆然としながら部屋にいる五人の様子を凝視していた訳だから。
急に看護師さんに家の父に何か……?
そう、今の今直ぐ退院など無理……。それに父さん? 皆さんに迷惑をかけずに大人しく寝ていないといけないよ。と、急に告げて欲しいと遠回しに嘆願をされても。
僕自身も困惑、動揺をしながら五人の物々しい様子を凝視していた訳だから反応はできないのだが。
看護師さんに僕は声をかけられ。これだけ自身の脳裏で思案をして考えを纏めることができたので。少し間が空けば看護師さんの要望通りの振る舞い。
僕は家の父へと。
「父さんー! いい加減にしないと! 小さな子供みたいな振る舞い……。そう、我儘を主治医の先生や看護師さん達へといってはだめだよー! それに? 病院内で大暴れをするとはどう言うことなの、父さんー? 父さんみたいな我儘や荒々しい行為など、小さな子供でもしないよ! いい加減にして大人しくしないといけないよ……」と。
主治医の先生や看護師さん達へと幼子のように我儘を告げてみたり。病院のベッドの上で大暴れをする父へと僕は、諫めの言葉を告げ。ベッドの上で大人しく。
そう、安静をするようにと告げる。告げるのだよ。
でもね? 家の父は? 取り敢えずは、ベッドの上で暴れる行為はやめてくれたのだ。
でもその後は? 憤怒──。荒々しい表情で彼を諫めた息子の僕を見詰め……。
それも父は、気落ち、落胆、自身の肩を落としながら悲痛な表情と声色で息子の僕へと、「でもなぁ……」と語りかけてきたのだ。
◇◇◇◇◇
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