第10話 父のわがまま……。(2)

 実際今の僕の耳にも、自身の足音が妙に響いて聞こえる気がするし。その他にも色々な音。雑音と言えばそれまでなのだが。病院内のエレベーターを降りてから父が入院をしている部屋迄の通路の区間内でも色々な音……。


 そう、大変に慌ただしく。そして忙しく動く看護師さん達や医師の先生達の足音……だけではなく。


 この入院用の病棟で入院しながら日々を暮らす。入院患者の老若男女の人達の慌ただしい声や台詞が各部屋の中からや通路からと。あちらこちらへの移動の為の慌ただしく動く足音に加えて、車いすの車輪の音や歩行用の補助器具の車輪の音に、ベッドを移動する時の音までもが本当に沢山──。父の入院している病室の部屋へと移動の最中の、僕の耳へと。自身の響く足音以外も多々聞こえてくるから僕は少しばかり関心をしてしまう。


 早朝の総合病院内。入院用の棟はこんな慌ただしい様子なんだと関心をしたのと新たな発見なのだと。他人が聞けば少々不謹慎かも知れないと思うことに僕は関心。興味をそそりながら父が入院している部屋へと向かうのだ。


「た、頼む。頼むから帰宅をさせてくれ。お願いだ」


 ……ん? あれ? 人の声? それも、少しばかり荒々しい声色で最初言葉を発したと思ったら。直ぐに気落ち。最後は落胆したような声音だった気がする? 今の台詞は……。


 一体誰だろう? 入院用の病棟欄で騒いでいる者はと、僕が思いながら『カツカツ』と、音を立てながら歩いていると。


「大島(だいとう)さん、そんなことは無理ですよ。それに、貴方は未だ絶対に安静していないといけない人ですから無理です……。担当の先生も退院の許可など絶対に頂くことなどできませんから。早くベッドに横なってください。大島(だいどう)さん……」と。


 女性の声……。


 そして僕は自身の脳裏で直ぐに、『大島(だいどう)さんって、家じゃないか!』と思う。


 思うと直ぐに、『父さん、どうしたの? 何があったの?』と、思いながら早足──。


 そう、僕は慌てて父が入院をしている部屋へと向かったのだ。



 ◇◇◇◇◇

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