8,この戦いが終わったらフロリダでポテトでも作るさ、ってな

 四天王ハルファーをアイテムボックスに入れていた頃、ちょうど2時間たったのか身体が光りだし俺は現世へと戻された――


「ここは!」


 うわ、なんだこのジャックさんとかが24時間働いてそうな場所は。

 突然現れた俺達にみんなが銃口を向けてる。

 やっぱやべえ感じになってんじゃん。

 ゲートの本を回収されたわけだな。

 ここは警察か?

 FBIってやつか?

 ちなみにハルファーは戻ってきてすぐアイテムボックスから取り出しておいた。


「いいか、絶対に人間を殺してはいかんぞ」

「どうして?」

「そ、それはだな、うん、俺の作る世界で奴隷として使おうと思ってるからだ」

「わかったよ」

「おういい子だ。んで、近づく奴らには【魔王がやったことだ】と、【全ては魔王の仕業だ】と洗脳するんだわかったか」

「魔王さまは凄いんだって教えればいいんだね」


 よしこれで俺の仕業ではなくなる。

 本当の魔王ではないのだから。


「必ず迎えに来るからな、ここから出るなよ」


 転移できる場所は一度行ったことのある場所に限られてるからな、動かれると面倒になる。






 転移で自宅へ戻った俺は、何もなかったように家族と夕飯を食べていた。

 すると、テレビから臨時ニュース。


 世界指名手配中マフィアのアジトが襲撃され、爆発炎上。

 指名手配犯は瀕死状態で発見されたのこと。

 ……ぜってー、俺がやったやつだ。


「この魚うめーな!! なんてゆーの!?」

「お兄ちょっと黙って」


 せっかく話を逸らそうとしているのに、妹が阻止する。


『ただいま続報が入ってまいりました。現場に向かった警察官複数の証言により、アジト襲撃は【マオー】というアジア系の男性。公開された似顔絵がコチラ』


 ぶーと吹き出す俺。


「ぷはは! あのマオーって似顔絵、お兄に似てない?」

「いやいやいやいや! アメリカの話だろ、いつ行って帰ってこれんだよ」

「あ、目撃者のインタビューだって」


 テレビに映し出されたのはハルファーの顔。


『次はあなたの街へ、魔王さまが破壊の旋律を届けにいくかもよっ』


 あのボケ、なにやってんだよ!!!


 知らんぷりしながら夕食をさっさと済ませ、トイレに入る。

 俺は急いでハルファーのいる場所へ転移。


 ハルファーは命令どおりちゃんと現場で待っていた。


「言われたとおり、魔王さまの手柄だと宣伝しといたよー」

「ちげーよばか!」

「しっかりと魔王さまの顔を覚え込ませたよ! えらい?」

「あ、ああ……俺の言い方が悪かったから……うぅ」


 えらいえらいとハルファーの頭をなでていると、俺に気付いた警官たちが駆け寄ってくる。

 しゃーなしハルファーを小脇に抱え、自宅のトイレへまた転移。

 ドアを開けるとタイミング悪く、ちょうど妹が廊下にいた。


「あ……」

「えっ、お兄……その子……さっきテレビで」

「いや、違うんだ! 待て!」

「お母さああああん!!!」


 やべえ!

 どう弁解していいのかもわかんねえ!

 俺はハルファーの手を引き、とにかくダッシュで家を出た。


 くそ、異世界にも自由に行けねえし……

 居場所がねえ。

 どうしたもんか。

 公園のベンチで黄昏れる俺。


 最悪だ。


 ハルファーを見られたことには言い逃れできない。

 すぐに精神干渉で記憶を変えてもらえばよかったのだろうが、何て命令すればいいのか咄嗟に思いつかず。

 今頃警察にでも通報されてたらどうしよう。

 とにかく職質に合わないよう身を隠すか。



 てか、ハルファーを始末しちゃうか……


「どうしたの? 魔王さま」


 無邪気な瞳で見つめてくるハルファー。

 ……いや、さきに他の四天王のことを聞き出そう。

 それからでも遅くないだろ……


「なあ、他の四天王はどうしてんだ」

「え? 幻影山で一緒だったんじゃないの? 復活の儀式のため」

「そ、そうだった、ど忘れしてたぜ俺ってば」


 ということはまだ幻影山にいるだろな。

 そいつらを倒して魔王復活を阻止するのが異世界での俺の仕事。

 でもこっちの世界はどうすんだよ。

 俺が生きてくのはこっちだぜ。


 いっそ本物の魔王をこっちに連れてくるか?

 こっちで暴れさせて、そこで俺が勇者としてみんなの前で倒せば……

 英雄じゃね!?


 そんな妄想をしながら、ゲートが開く時間まで隠れて過ごした。

 隠れ家は学校の図書室。

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