ふたつにひとつの御陵さん

猿烏帽子

Part:Old

煙る塔

 私の周りのあらゆるものが音を立てて崩れていく。

 骨粉が私達の身体を白く染め上げていく。

 ここまで勇敢に先導してくれた彼でさえもこの塔が崩れていくのを目の当たりにして、黒曜石のような頑強な身体を恐怖で震わせる事しか出来ないらしく、連れ添ってきた亜麻色の髪の乙女が桃色の唇から紡ぎ出す言葉には私の知らない音の響きが加わっている。

 私の目の前の床に槍のように変形した骨が突き刺さる。今も震え収まらぬ私の地面あしもとには、先刻瓦礫に頭を潰された神父の持っていた十字架が転がっていた。


 この塔の外では多くの無辜の民が死に、人々の「正義」による混沌が、この大地の人々を覆い隠してしまった。


 愚かな私達を許して下さい。


 私達はあなた達の夢を、

 あなた達の命を、

 あなた達の未来を、


 ふたつにひとつの選択を、間違えました。

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