【箱船《エレベーター》】と異世階の【旅人】
佐藤.aka.平成懐古厨おじさん
1階は旅立ちの世階
女神様を祭る神殿の横、岩肌に沿うようにそびえ立つ巨大な扉の前で、少年はたくさんの人々に囲まれながら、別れの時を惜しまれていた。
彼は今年の【旅人】に選ばれた。
そして、今日、【
【
【旅人】は、第1階において、この世階を出て他の世階に行くことの許された存在だ。春のある1日に、【
体力に自信がある方ではなかったが、毎日トレーニングを重ね、体を鍛え続けた。見たことのない世界を知りたい、その好奇心が、全ての原動力だった。そして、日々の鍛錬が実を結び、今年の【旅人】として認められたのだ。
少年の元に駆け寄ってきたのは、彼の幼馴染の少女だ。彼女は、「あんたのこと、待ってるんだから、絶対帰ってきなさいよ」なんて、強気な言葉を囁くと、そっと彼から離れていく。
今だかつて、他の階層に行き、帰ってきた者はいない。彼女は、その事実を知っていた。しかし、少年の前では笑顔を崩さない。自分の愛した少年に対して、最後に見せる姿が泣き顔だなんて、絶対に嫌だったからだ。
扉が、轟音を上げ、開き始める。【
少年の体は、中から出る眩しい光に包まれ、【
*
少年は、異世階へと旅立った。
光が弱まり、巨大な扉は、閉じていく。
旅立ちの儀式は、無事完了したのだ。
春の陽光と、爽やかな風は、彼の旅立ちを祝福しているかのようだった。
こうして、また一人、階層世界の【旅人】が誕生した。
少女は、愛しい人への想いをその胸に秘めながら、異世階と繋がる【
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