天使の世界へ行った悪魔のアッくん
柳佐 凪
第1話 天使の世界へ行った悪魔のアッくん
「これ何?」
「これは『天使のふわふわ着ぐるみセット』三千九百円」
「僕たち悪魔が、そんなの、着てどうするの?」
「これを着るとね、天使の世界にワープするんだよ。脱いだらすぐに帰ってこれる。面白いよ、三千九百円」
「天使の世界ってどんなところなの? ちょっと貸してよ」
「しつけぇな……聞いた話では、天使の世界には天使しか住んでいなくって、ここと違って良い奴ばっかりって話だよ……でもね、いいやつばっかりの世界をアッくんが気に入るかどうかはわかんないじゃん? そんで、つまらなかったから買わないとか言われたら、俺だって嫌だし、今後の二人の悪魔関係に響くじゃん?」
「悪魔同士の関係なんて、とるに足らないもんでしょ? 大切にするほどたいした関係なんかないよ、試すぐらいいいでしょ?」
「……万一だよ、あくまでも仮定の話ね」
「悪魔があくまで、仮定の話をするんだね?」
「そう、悪魔があくまで仮定の話をするけれど、万が一、アッくんが帰って来なかったら、俺は取立てにも行けない……いいから出せよ三千九百円」
「うるせぇ、ばか! わかったよ、買うよ天使の着ぐるみ……はい、三千九百円」
そんな訳で、僕は古着屋で天使の着ぐるみを購入した。でも、まだ着ようかどうか悩んでいる。もし、噓だったら古着屋さんを抹殺しといけない。悪魔だから、それぐらい当然だ。それに、もしホントだったらちょっと怖い。天使みたいな、想像上の生き物ばっかりが住んでいる世界なんて、生まれてこの方、悪魔にしか会ったことのない、悪魔世界の住人が行って、生きていけるか自信がない……でも、脱いだらすぐ戻って来れるんだって話だけれど、それが噓だったら……だって、悪魔が言うことだし、簡単には信じられない。
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