今夜は南風雨
@kaibakougan
第1話 紫陽花
「なに」と雪絵はドライマティーニに口を付け、「別に」と彼は少し動揺しながら返答した。
薄暗いバーカウンターに客は2人だけしか居ない、カチカチとバーテンが氷を掻く音だけが響いていた。
「何か言って。貴方が黙っていると何時も想像もつかない事を言い始めるから準備しておかないと」と再び言うと
「アジサイ見に行かないか。梅雨の鬱陶しい気分に思う花」
「何で、アジサイ。花言葉は最悪だけど、貴方知っている」と視線を向け
「人間が決めた事で、花には関係ないだろう。花は綺麗だからいい」と彼は答え
「アジサイって、鎌倉」と彼女が
「ビンゴ。感が良いね」と彼が言うと
「ふーん、私と縁を切りたいと言う事ね。」と彼女が頷くと、
「なんでそうなる。」彼が返答し彼女は当たり前のように、
「鎌倉、アジサイ、縁切り寺。別れの理由にはピッタシね。でも、私は迷信とか信じないけど」と指を彼に向かい指した。
「君の悪い癖だ、考え過ぎだし。縁は切れる時に切れる、自然の成り行きだ。君が望んでいるかもよ」と彼は彼女が差した指を払いのけた。
「切りたいのね、縁を」低い声に
「そんな事言ってない」彼はグラスに手を伸ばし、彼女はその手を制止し
「正直に言って、店に入って来た時から分かっていた。貴方は嘘を付けないひとだから、気持ちが伝わってくる。」と彼の手を離した。
「雪絵は何時も赤いマニュキュアだけど、何か意味が有るのか」と言う彼に
「はぐらかさない」と彼女は答えた。
彼は困った様子で下を向きながら、腕時計を見た。そして「雪絵はどうしても別話にしたいんだろ」と言うと直ぐに
「今腕時計見たでしょう。此れから雨上がりの夜を何処かで誰かと会う約束でも有るの」と髪を掻き上げた
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