あの日の君ともう一度だけ

ちびのひと

第1話

『また、会えるといいね』



その一言で俺は夢から覚めた。

「今日もこの夢か......」

あの日、昔一度だけあったことのある少女をまだ俺は忘れられていない。

小学校低学年の時、爺ちゃんの家の近所で行われている小さな花火大会の日だった。たしかその日は珍しく人が多く、会場も混んでいて、俺はもっと高いところから見ようと、裏山に登って行った。けどその頃の俺は小さかったためその山で迷子になってしまった。泣きじゃくっていた俺はその山の湖にでたところで一人の女の子に会った。

「大丈夫?迷子になったの?名前は?」

泣いている俺を心配して声をかけてくれた。

「高砂...大和...」

その時は激しく泣いていたのであまり覚えてはいなかったが同い年にしては綺麗な顔をしていて、綺麗な銀色の髪をしていた。

「大和くん?一緒に降りよう、ね?」

手をつながれ2人で山を抜け、会場まで送っていってくれた。

「ありがとう...」

「ううん、いいよ。また、いつか会えるといいね」

すぐに母が俺を見つけ、もう一度お礼を言おうとしたが、もうそこにはいなかった。幽霊とも思ったが彼女はしっかりと手を握ってくれていた。

その件のあとも何度も爺ちゃんの家にも行ったのだが一度も会えず、一年前ほどに爺ちゃんが亡くなってからはもう行ってはいない。

当時の俺は小学校と中学生の同級生の女子にまったく好意を持たなかったのだが、彼女にだけは異様に惹かれた。

そしてもう会えないと思いながら今の高校生1年になるまで、退屈に過ごしていた。

最寄りの駅まで歩いて、電車に乗り、改札を降りていつもの通学路を歩いて......

「あっ、ごめんなさい。」

「あ、いえ。」

(1年生の普通科のリボン、あんな子いたっけ。隣のクラスか?)

急に目の前に現れたので避けれず、ぶつかってしまった。

すこし俺よりも身長が低めの、グレー色と言っても綺麗な色のセミロング。一瞬見えた綺麗な顔立ち。そんな子が同級生...

(いや、なんでこんなにさっきの彼女の事を気にしてるんだ?まさか...いや、あんな田舎の子がここにはいないか...)

少し疑問を抱きながら、朝のホームルームを迎えた。

「はーい、今日も一日を送る前に、一人紹介したい人がいまーす。」

「なんだー?」「先生結婚すんの?」「え?マジ?」

こんな風にいじられているは花咲唯先生、1年1組の担任だ

「違いますよー、転校生です。入ってきて」

「はい。」

教壇の前に立つと、一言。

「初めまして。神崎雪菜です。高砂大和くんという方に会いに、岡山から来ました。よろしくお願いします。」

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あの日の君ともう一度だけ ちびのひと @Chibito

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