第12話 quattro.5

ワイワイ、ガヤガヤとバーベキューをして満腹になると各々自由に時間を過ごしていた。

葛城はビーチで横になり、楓と柚葉はタープの日陰で昼寝をしていた。

サラサラと爽やかな海風が頬を撫でる。

亜紗と凛、そして杏は海を見ていた。


「静かね」

「そうだな」


杏が立ち上がった。


「どこに行くんだ?」

「お散歩」

「それじゃ、服を着て帽子をかぶって行けよ。日差しが強いからな」

「うん」


杏がワンピースを着て麦わら帽子をかぶり波打ち際に歩いて行った。


「杏ちゃん楽しそうね」

「そうだな、これで良いんじゃないか」

「私もそう思うわ。杏ちゃんのお陰で凛も少し変わったしね」

「そうかぁ?」

「そうよ」


凛が一眼のデジタルカメラのファインダーを覗いて写真を撮りだした。


「珍しいわね、写真を撮るなんて」

「今は今しかないからな」


凛が立ち上がり、葛城や楓、柚葉の寝顔を写す。


「凛、私はNGよ」


カシャとシャッターがおりた。


「NGだって言ったでしょ」


亜紗が微笑んだ。

そして凛は杏の所に歩いていき杏の写真を撮りはじめた。


「凛、一緒に散歩しよう」

「少し、歩くか」

「うん」


2人並んで歩き出した。


「綺麗な海だね。生まれて初めてこんな綺麗な海を見た。本当に凛が言っていた様に天国みたい。ありがとうね」

「ありがとうなんて。急にどうしたんだ?」

「だって、凛があの時連れ出してくれなかったら。こんなに綺麗な海見られなかったもん、それに毎日が輝いていて楽しいの」

「そうだな」

「凛?」

「何だ?」

「手繋いで良い?」

「ほら」


ぶっきらぼうに凛が手を出した。


「えい!」


杏が凛の腕にしがみ付いた。


「杏、それは繋ぐと言わないんじゃないか」

「だって、良いじゃん」

「まぁ、良いか」

「そうそう」


楽しそうな杏と凛の姿を亜紗が微笑みながら眺めていると横で寝ていた楓が目を覚ました。


「あれ、凛さんは……ああ、ずるい!」


凛の手を両手で掴みながら歩いている杏を見て柚葉を起こした。


「柚葉、凛さんと遊ぼう」

「うん、分かった」


まだ、寝ぼけている柚葉の手をつかみ走り出した。


「楓、危ないよ」

「早く早く」


楓が柚葉の手を引きながら凛と杏の所に駆け寄る。


「もう、杏ちゃんばっかりずるい。楓も凛さんと手を繋ぐ」

「それじゃ、柚葉も」

「おいおい、手は2本しかないんだが」

「それじゃ、私が3人の写真撮ってあげる」


杏が凛からカメラを取りファインダーを覗く。


「撮るよ。1+1は?」

「2!」


順番に凛とのツーショットを撮ったりしながら4人で騒いでいると、葛城が起き出してクーラーボックスに入っているお茶を飲んだ。


「あっちー、あれ、皆は?」

「あそこよ」


亜紗が指差した。


「凛さんはモテモテだな。俺も混ぜてもらおう」


葛城が走り出した。

しばらく、遊んでいると亜紗が凛達に声を掛けた。


「少し、早いけれどそろそろ撤収しましょう」

「はーい」


楓が返事をした。


「それじゃ、片付けだ」

「了解!」


準備も手際よくあっという間だったが、撤収も凛と葛城にかかればあっという間だった。

バーベキュー台やタープを片付けている間に女の子達がソリにクーラーボックスに乗せて車まで運ぶ。

ゴミを集めて撤収が完了した。


「それじゃ、帰りましょう」


ワゴンに乗り込み『ARIA』に向かう、皆遊び疲れて直ぐに眠ってしまった。

店に着き、凛が寝ている皆を起こした。


「着いたぞ、起きてくれ」


店で積み込んだ荷物を降ろしていると杏に楓と柚葉が何かを内緒話をしていた。


「ねぇ、凛」

「どうした杏、帰るぞ」

「あのね、凛。楓と柚葉が凛の家に行って見たいって」


凛は腕組みをして少し考えて楓達の方を見ると楓と柚葉が手を合わせて凛の顔を見た。


「少しだけだぞ」

「「ヤッター!」」


楓と柚葉が飛び跳ねた。


「葛城はどうする? 家に来るか?」

「自分は、この後用事があるんで荷物片付けておきますよ」

「そうか、じゃ頼んだぞ。義姉さんまた明日」

「ちゃんとしなさいよ」

「分かってるよ」


ワゴンに乗り込み凛の家に向かった。


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