エロゲが出会いってマジっすか

卵粥

第1話 無かった事にしたい

 今日は、楽しい、エロゲの発売日~♪

 というわけで俺、布良めら和哉かずやはウキウキしながら新作エロゲを買ったところだった。

 思えばこの日まで長かった…。

 三ヶ月前、新作発表されてからというもの、野望を抱えて生きてきた、発売まであと○○日だ、と…。

 だが、それはもう俺の手の中にある!

 そんな喜びを抱え、俺は店を出る。

 ああ、今の俺は周りから見たらやべー奴だろうなぁ…。

 だがそんな事はどうでもいい、要は知り合いにさえ見られなければいい事――

「あれ、布良くんですか?」

 瞬間笑顔が固まる。

 ……さて状況を振り返ろう。

 Q1.今の状況は?

 エロゲを買って店から出て、現在有頂天だ。顔も気持ち悪いことになっている。

 Q2.じゃあ今いる所は?

 エロゲ買って出たんだから、エロゲショップの前だ。ちなみに俺がよく行く所は、外から見ただけでそういうところとわかる。

 Q3.今声をかけてきた人は?

 クラスの、いや、学校中の有名人である椎葉しいば真白ましろさんだ。

 よし、状況はまとまった。

 A.詰んだわ、これ。

「うわあああああ、し、椎葉さん!?あああ、き、奇遇だねぇぇ!?」

 おお、やべえ、声も裏返ってるや。

「え、えっと、落ち着いてください布良くん」

 落ち着いていられるかこの状況!

 と、とにかくこの場所から離れなければ、こんなところにいるのがばれては、ましてや椎葉さんに(そもそも女の子に)ばれるわけには!

「そういえば、布良くんは何の用事で――」

「ああああ、椎葉さん、喉とか乾かない!?ほら、何か奢るよ!?」

 俺の背後の建物見ようとする椎葉さん、慌てて遮る俺。

 いや、苦しすぎるだろこれ。

 けれど視界は遮れてるから、椎葉さんからは見えな――

「ああ、なるほど。ちょうどいいじゃないですか、喉乾いてますし、奢ってもらいましょう、お店で一番高いの」

 背後から氷点下まで冷え切った声が聞こえる。

 今は夏であるのに、汗は冷え切って寒気すらしてきた。

 ゆっくりと後ろを向く、ちなみに椎葉さんはよくわからないといった顔で立ち止まっている。

 そこには、椎葉さんになついている後輩兼、俺の幼馴染である星鳴ほしなり夏菜かなが、ゴミを見るような目でこちらを見ていた。

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