スクリプトキディ:技術力の低いハッカーの蔑称のこと
ゆーが
第1章 40万円→400万円
#G-0 ゲームマスター プロローグ「ゲームの目的」
2019/4/7「ゲームスタート」
8畳ほどの部屋の中、6面の液晶ディスプレイの中で踊るローソクチャートを観察する一人の少女がいた。
照明が消されたその部屋の中、液晶ディスプレイの青白い光りが照らしらされるその顔はまるで作り物のように整っていたが、退屈そうな表情がそれを台無しにしていた。
顔にかかったセミロングの前髪をかき分けるしぐさにはどことなく幼さが残る。
「奏、かなえ。いるんだろ」
部屋のドアが空き、少女によく似た顔の青年が入ってきた。その手にはマットブラックの無骨なデザインのノートパソコンが握られていた。
「何、お兄ちゃん」
少女はモニターを見つめたまま不機嫌そうに返事をする。その手はせわしなくマウスとキーボードを操作し、ディスプレイの表示を次々と切り替えていた。
キーボードやマウスそのものはまだ新しそうだが、かなり使い込まれているようで、スペースキーやエンターキー、マウスの左ボタンなどよく押されるボタンは表面のコーティングが剥がれはじめていた。
「そろそろ部屋に引き篭もるのも飽きてきた頃じゃないか?」
「そんなの、お兄ちゃんには関係ない」
少女は兄のほうを振り向き、その顔を睨みつける。
壁には少女の制服のブレザーが掛けてあり、それにかぶせてある半透明のカバーはひどく埃をかぶっていた。
「別に学校に行けとかそういうことを言いたいんじゃない。」
青年は苦笑交じりの笑みを浮かべる。
「面白いこと考えたんだけど、お前も一緒にやらないかと思ってさ。」
「興味ない」
少女は突き放すように言うと、ディスプレイに向き直った。
「年利70%を叩き出すっていうのも十分凄いと思うけどさ、もっと凄いことやってみないか?」
「どうしてお兄ちゃんが私の運用実績知ってるの?」
再び少女は兄のほうを向き、今度は不服そうな顔を向ける。
「何でって、お前の証券口座含めて今家の口座管理してるの俺だし・・・まあ良いや」
青年は妹の机に近づき、机の上においてあった一冊の本を取り上げる。タイトルは「How to Set Up and Utilize Your Offshore Company」。「ペーパーカンパニーの作り方とその活用法」といったところだろうか。
「こういうこと、本やネットで読むだけじゃなくて実際にやってみたいと思わないか?」
青年は妹の本棚へと目を向ける。「企業分析」、「マネーロンダリング」、「THE TRUTH OF TAX HAVEN」、「相場操縦 その歴史と手口」。そこには投資・金融関連の、基本的なことから法的に黒に近いようなところまで、日本語と英語の様々文献が並んでいる。
「色々あってな、今これだけ金が余ってる。」
ノートパソコンのディスプレイを妹に見せる。そこにはオンラインバンクのサイトが表示されており、4と0が5つ、すなわち40万円という預金残高が記されていた。
「俺たちはこれを1億円まで増やす。」
「お兄ちゃん正気?」
「もちろん」
目を丸くする妹に、青年は不敵な笑みを浮かべていた。
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