六、ドラゴンとの戦闘。三人いれば、何とか……なれ!
「サラマンダー、ウンディーネ、そしてノームよ。賢者の住まいを襲う怪物共を退治せよ」
姫が凛とした声で命令した。エルフが扉を開ける。俺たちは外へ出た。母ちゃんは夢だと思ってるだろうな。
早速、敵勢力を見積もる。見える範囲ではゴブリン十五体、オーク二体、それとレッサードラゴン一体。非常にまずいが、ノーム次第でなんとかなるかもしれない。
レッサードラゴンが吠えた。小型種とは言え、オーク三、四体分ほどの体重がある。以前戦った事があるが、腹以外の鱗には爪はほとんど通らず、エネルギー弾もはじくほど丈夫だ。それにたまに火を吐くし、体当たりも厄介だ。多分、さっきの揺れはこいつだろう。
それにしても、賢者の家は思ったより小さい。小屋と言ったほうがいいくらいだ。中の広さと外見があっていない。また、丸太を組んで作ってあるが、さっきの攻撃で傷一つついていない。防御魔法か。
よし、見積もり終わり。戦闘開始。
俺は小屋に粉をかけてから火をつけようとしているゴブリンに急接近し、一体を捕まえた。
とりあえず、奴らを近づかせないようにして、何か仕出かす前に片付けよう。
高熱の誘導弾で小屋の周りに弾幕を張る。絶叫と肉の焼ける臭い。それと爆発。持ってた粉に引火したんだろう。物騒な奴らだ。
ウンディーネ・サツキはオークの背後に回り込もうとしている。後ろから爪を突き立てる作戦だろう。
そして、ノーム・母ちゃんは、なんと、レッサードラゴンの正面!
夢だと思ってるんだろうな。あの大胆さは。
ノーム・母ちゃんは先制攻撃をかけた。膝をつき、両の拳を交互に地面に打ち付ける。地面を衝撃波が伝わり、レッサードラゴンを下から突き上げた。そいつは苦痛の叫びをあげる。
へえ、ノームは離れたところから攻撃できるんだ、と感心した。衝撃波で絶え間なく揺らされ、レッサードラゴンはその場を動く事も、火を吐く事もできないらしい。
俺は周囲を見回し、見逃したゴブリンがいないか確かめたが、全滅させたのか、逃げてしまったのか、もう雑魚はいなかった。まだ弾は残ってるのに。
ウンディーネ・サツキはオーク一体を倒し、二体目に爪を突き立てたところだった。そいつの目が色を失っていく。
ノーム・母ちゃんはまだレッサードラゴンを揺らしていた。次にどうするか迷っているようだ。それは仕方ない。戦い方なんてわかるはずはない。それとも夢の世界のつもりで遊んでいるのかもしれない。
そろそろ援護しよう。ノーム・母ちゃんがこっちを見上げた時に合図する。片手を差し上げ手のひらを返す。ドラゴンをひっくり返してという意味だ。通じるかな。
通じた。ノーム・母ちゃんが両拳で同時に地面を叩くと、これまでの倍以上の衝撃波が伝わり、レッサードラゴンは抵抗できずにひっくり返った。柔らかい腹がこっちを向いている。
すかさず残った弾を分割せずにそのままぶち込むと、腹に大穴が空いた。縁が焦げている。
そこへウンディーネ・サツキが急行し、穴の空いたところから体内に両手を突っ込み、すぐに離れた。
レッサードラゴンは苦悶し、痙攣し、やがて動きを止めた。
怪我なしに終わったな、とほっとする。俺とウンディーネ・サツキは周囲を再確認したが、怪物はもういないようだ。
ノーム・母ちゃんはそんな俺たちをじっと見ていた。
いつの間にか賢者、姫一行が外に出ていた。姫が右手を差し上げる。意識が薄れていく。
……さあ、母ちゃんに何と言って説明しよう。
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