ちんちんかもかも

発条璃々

第1話 はばかれるカンケイ

 冷房の効いた図書室で、本を読む二人。

 今は放課後。室内に人影は見られず、廊下を走る音がまばらに聞こえるくらい。

 基本静寂に包まれている。

 

 僕の目の前で、熱心に読書にふけっているのは、森本あやめ。

 あやめは、図書委員兼、部長でもある。

 何の部かと言われると「○○部だ!」と、宣言するのは少々、はばかれる……

 理由は字面が悪い。


「なあ……うちの部の名前って変えられないのか?」

 

 チラッと横目で僕を一瞥しながらも、本から目を離さず、あやめは口を開いた。


「そんなに引っ掛かるの? 普通じゃないかな。だって私たち、本が好きで読むことが好きで、耽ってるんでしょ。本に淫してる。だから書淫部でいいじゃない」


「そうだけどさ……書淫部だよ、書淫部。何とも怪しい雰囲気でごにょごにょ……」

 

 しかし、照れて語尾が聞こえなくなる僕をよそに、クールビューティーあやめは、眉ひとつ動かさず真顔で言い放った。

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