放課後の夜に
renovo
授業
同じクラスの玲奈は髪が長くてとても清楚に見えて背が高かった。クラスでも人気があって彼女に告白して振られた同級生は数多くいた。
玲奈はじっと僕の手前の席で黒板に書かれている文字を見つめていた。
僕よりずっと前に座っていた。比較的僕は後ろの方の席だ。
玲奈は前の方の席に座りながら先生の授業をじっと聴いている。
先生はさっきから何やら難しい物理の授業をしていた。先生の頭はきれいに剥げていて銀縁眼鏡をかけている。
「ニュートンの力学は基礎中の基礎なんでちゃんと覚えてくように。じゃあ42ページの問題が解ける人」
ぱらぱらと手が上がった。僕はもちろん教室の後方の隅でただぼんやりと空想をしていた。
玲奈の黒髪が窓の外から吹く風に揺れている。今は夏休みの過ぎた九月で割と涼しい風が吹いている。
玲奈は相変わらず髪を揺らしながらノートと黒板の間を行き来していた。僕はもちろん授業に集中できるはずもなくただノートに必要最低限のことを見繕って書き込んでいた。
昼休みになると玲奈は僕の机のそばに片手にパンを持ってやってきた。玲奈の滑らかな髪が窓の外から吹く風に揺れている。
「さっきの授業の問題わかる?」玲奈はそう言ってじっと僕を見つめた。
「さっぱりわからなかった。とりあえず重力の法則を使うことはわかったけど」
僕は自信なさげにそう言う。
「それ全然違うわよ」
玲奈はそう言って少しあきれたように笑った。
「物理なんてわからないよ。どうせ僕は受験じゃ使わないだろうし」
「一応勉強しておきなさいよ。何かの役に立つんじゃない?」
玲奈は僕の隣の机に座ってぼんやりとパンをかじっていた。スカートから太ももがのぞいている。僕は机の上で弁当箱を広げていた。
「それおいしそうね」
玲奈はそう言って僕の弁当箱を覗き込んだ。
「玲奈はいっつも購買のパンだよね」
「私のお母さんは働いているから作ってくれないのよ」
玲奈は僕の隣の席で足を組んでいた。スカートの隙間からパンツが見えそうだ。
チャイムが鳴ると玲奈は席に戻る。細い肉体が後ろの席から見えた。
その日の授業の間、僕は玲奈のことを考えたり、明日の昼休みになんのパンを食べようか考えていた。
午後の授業はゆっくりと進んでいった。僕は時計の針ばかりみている。そのせいで僕の成績はクラスの中でも下の方だった。
勤勉な玲奈は午後の授業が終わると僕のもとへやってきた。
「今日部活いく?」
「暇だしいくつもりだけど」
「高校三年だし、私たちそろそろ引退する時期じゃないかな?」
「文芸部に引退なんてないさ」
「じゃあ次の授業が終わったら部室に行きましょ」
玲奈はそう言って席に戻った。
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