第13話 図書館
体育の順位戦は7-8月の夏休みまでに、5月と6月に2回行われた。その2回とも俺は最下位だった。そして、その2回ともフレイは1位だった。そのため、1回戦でフレイとは当たらなかったので、この2か月はフレイとは戦うことはなかった。
俺はフレイとエレオノール以外には気絶させられることがなかった。だから、他の戦い方を見ることが勉強になった。それぞれが属性の魔法を放つのだが、威力には個人差があった。フレイの取り巻きのヤンは、水の魔法を使っていた。ある相手に火の魔法を撃ち消すのに使っていたと思ったら、フレイの火の魔法には効き目がなかった。フレイの炎に触れたら、水が一瞬で蒸発してしまったのだ。
サムシーは、雷の魔法を使用していた。まだ効果は弱く、射程距離も短いようで、近接戦闘にしか使用できていなかった。
エレオノールはというと、フレイと同じくあれから対戦することはなかった。最初は下位の5人だったのだが、2回目からは上位5人に入ったため、俺と初戦で当たらなかったので、戦うことはなかった。
エレオノールの戦いは独特だった。魔法は発動させず、相手の攻撃を誘って1撃で相手の顎にカウンターを当てて勝利していた。俺がしようとしていた戦い方が、そこにはあった。
しかし、エレオノールは、フレイにはやられていた。炎の魔法でふところに入れないまま敗れさっていた。
俺は意気消沈して夏休みを迎えたかといえば、そうではなかった。この夏休みにある計画をたてていた。その計画の立案は、学校の図書館で見つけた1冊の本から始まった。
俺は、日曜日にたまに図書館へと足を運んでいた。
日曜日ともなると、他の生徒も全然いなかった。いや、エレオノールだけが1人で大きな長机に数冊の本を広げ読みあさっていた。その静かに本を住む横顔は、文学少女のように可愛く見えた。『エレオノールって、男だよな・・・』そんなことを考えていると一瞬視線が合った気がして、俺はエレオノールから視線をそらしてしまった。もう一度見ると、エレオノールはこちらには興味を失って本を読んでいた。
エレオノールに会いに来てたのかといえばそうではない。
魔法の習得のためである。魔力の量はかなり膨大になった気がするのだが、それを体に覆うという使い方しかできていない。何とかして身につけたかった。
索引を頼りに、魔法に関する本を探し、何冊か借りて家に帰って読んでいた。そこに書かれている内容は、アギリスに教えてもらったことや、学校で習ったことが書かれていた。つまり、読んでも新しい情報というものが得ることができなかった。
そして、夏休みに入る少し前にその本は偶然見つかった。
その本は、奥の棚に横に倒れており、その上に数冊本が積み上がっていた。その積み上がった本は内容に一貫性がなく、棚に書かれた索引とは一致していなかった。
その1番下にあった本の背表紙のタイトルには魔導書とあった。かなりボロボロなカバーであったが、ページをめくると読むことができた。
1ページ目には魔法使いが着そうなローブを着た人のイラストが載っていた。
それを見てテンションが上がって、上手く次のページがめくれなかった。
2ページ目には、魔法8元素というタイトルとともに円のような図とその下に2つの丸が書かれており、その下には図の解説がついていた。
俺は、ひとまずそういった部分は置いておいて、お目当ての内容を探した。そしてパラパラとページを進めていくと、探し求めていたものがあった。
俺は歓喜に打ち震えた。その見出しにはこうあった。
『ファイアの撃ち方』
『キターーーーーーーーッ!!』
俺はその内容を読んだ。体内の魔力をいったん
俺の心臓は大きく脈打ち、心音がこの静かな図書館の全員に聞こえているのではないかと錯覚させるほどだった。
俺は震える指でページをめくり、詠唱の書かれたページにたどり着く
『○×♩/-@&!▽ ▲)」)(¥//、Ω℀ Πλθ?・($』
『ファッ?!・・・・』
詠唱の文字が読めなかった。まさか読めないとは思っていなかった。生まれながらにしてこの世界の言語を理解していたのにどういうことだ・・・?
俺はしばらく考えた。
そして、エレオノールにこの言葉が読めるか聞いてみることにした。
「あのー、ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・・。」
長机に本を広げ読んでいるエレオノールに話しかけた。エレオノールに反応が無かったので、無視されたかと思ったが、
「ん?今何か言ったかい?」
本から目を離し俺の方へと顔を向ける。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・」
そう言って手に持っていた本を差しだし、詠唱の文字が書かれたところを指さしながら
「ここのところが読めないんだけど、エレオノールは分かるかなと思って。」
エレオノールは差し出された本を一読すると、
「ちょっと僕にもわからないな。」
残念ながらエレオノールにも読めなかったらしい。
しかし、その文字をノートに書きとっって、
「何か分かったら教えるよ。」
と言ってくれた。もしかしたら、俺のことを嫌がってないのかと思って、会話を続けてみようと思った。
「いつも図書館で見かけるけど、何の本を読んでるの?」
「疑問に思ったことを調べているんだ。この世の中は謎で満ち溢れてるからね。一つの疑問に答えが出たら、また新たに疑問が生まれる。それの繰り返しさ。」
具体的な内容が聞きたかったが、抽象的な答えが返ってきた。
「へー、それで今はどんな?」
「今かい?そうだな、君に見せられた文字も気になるけど・・・今現在は、僕たち竜族についてのことかな。僕たち竜族の寿命はだいたい1万年くらいは生きられるはずなんだ。」
『1万年って・・・けど、そういや最初の授業で、今の皇帝が1200年前に創ったと言っていたような。あの時はいろいろありすぎてスルーしてしまっていたっけ・・・』
俺が授業を思い出している間にエレオノールの話は続く
「でも、このルード皇国では最年長は1300歳くらいらしい。皇帝やその側近の何名かがそのぐらいの歳らしいんだけど、そのみんながまだまだ元気で若々しいようだ。じゃあその上の世代、皇帝の親の世代や、そのまた親の世代はどこへ行ったんだい。こんな風に人口が分布が突然途切れているのは1300年前に何かがあったんじゃないかと考えているんだ。だから、僕は今できるだけ昔の文献を読んでその謎を解明しようとしているんだ。もしかしたら、その文字も1300年以上前に使われていた古代文字かもしれない。何か見つかったら君に報告するよ。」
そう言って、俺から本へと視線を移した。
何か壮大なことを解き明かそうとしているような感じがして、邪魔しちゃ悪いと思い、魔導書を借りるために受付へと向かった。
詠唱の部分は読めなくてもそれ以外の部分は読めるし、詠唱さえできれば全てが使える状態にしておこうと思ったからだ。一歩前進したことが嬉しかった。
俺はその日の帰り道ふと疑問に思った。
「父さんと母さんはいったい何歳なんだろうか・・・・?」
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