第10話 体育の授業・その1

 体育の授業は週に一度行われる。10人がくじを引いて対戦相手を決める。そして、5戦を行い、勝った5人でくじを引いて、さらに戦いが行われる。1人は不戦勝となり。勝った2人のどちらかと戦う。そして最後の勝者を決める。


 負けたものはそれで終わりかというとそうではない。

最初に負けた5人は、勝ったものと同じく、負けたもの同志でくじを引き戦いが行われる。そして負けた中の勝者が決められる。


 不戦勝で勝ったものが負ければ、5人の中の敗者2人と戦わなければならない。そしてそこで負けたものはさらに、もう1戦残った敗者と戦うことになる。

つまり、全員の順位を決めるために、3戦、もしくは4戦することになるということだ。

これを1月という単位で行う。1週間に1戦のペースで格闘戦が行われていく。


『最初のくじ次第で、フレイと当たらなくて済むな。』

なんてことを考えていたら、やっぱりフラグでしたか・・・

第一試合でいきなりフレイとの対戦を引き当ててしまった。


「ふん、人間なんて俺が成敗してやる。」


「アニキー。ぶちのめすでやんす。」


「がんばってー。」

取り巻きの2人が応援をする。他のものたちは黙って観戦したり、本を読んでいたりしていた。

俺とフレイの間に先生が立って、開始の合図を宣言した。


『今まで頑張ってきたことで何とか乗り切ってみせる。』


「ぶっ飛べ。オラァッ!」

叫びながら、右の拳を大振りさせてきた。


 それを俺は真正面から受けるのではなく体をひねって拳を避けるように相手の横に来るように受け流した。

俺が学習したのは、正面から竜人の拳を受けてはいけないということだった。いくら、魔力でガードしていても、俺の体は竜人の拳に耐えられないのだ。


 さらに俺には決定打にかけていた。自分から仕掛けてもあまり意味がないのは分かっていた。竜人の防御力は並大抵の力じゃ突破できない。

だから、ある程度戦ったら降参を宣言しようとしていた。

そして方針も決まり、何度かフレイのパンチを受け流していると、

「攻撃してこねーのか。人間は好戦的だって話だったじゃねーか。」

何か人間に対して恨みでもあるのか、それとも俺が気に食わないのか・・・


『誘いには乗らないぞ・・・』


「それなら、これならどうだ。」

そういうと拳に炎を纏わせた。


『あれはイグニスがやっているのを見たことがあるが、かするだけでやばい。』

殴りかかってきた拳をいなすのではなく、拳から大きく飛びのいた。

その瞬間フレイの口から大きな火球が飛び出した。大きく飛びのいていたので、空中で身動きが取れなかった。


「完全に狙われた。」

魔力障壁を前方に最大限放出するという選択肢しかなかった。



 気づいたら、その日の体育の授業は終わっていた。授業の終わり付近で先生に起こされ、教室へと戻っていった。


 午前中の授業が終わり、昼ご飯の時間だった。それぞれ、お弁当を持ってきていた。教室で食べるのも外で食べるのも自由だった。


「危ないでやんす。人間様に弁当が取られるでやんす。」


「そうね。隙あらば奪おうとしてそうですわ。」

フレイの取り巻きの2人が俺に口撃を始める。


 トーナメント表で分かったのは、2人は男の方をサムシーといい、女の方をヤンといった。

この2人はフレイと同じく俺に対して、敵対心を抱いているようだった。


 その他の6人はそれに加わるということもなかったが、助けてくれるということもなかった。あまり関わりたくないというところだろうか。

ウェンディーとイグニスとお昼を食べようと思ったが、クラスによって午前中の終わる時間はばらばらで、いつ2人がお昼になるかが分からなかった。


『あの2人もクラスで新しい友達と食べてるかもしれないな。』

そんなことを思い、1人で外に出て大きな木の下で弁当を食べた。


本当のところ、2人とはあまり顔を合わしたくはなかった。人間が竜人たちに戦争をしかけたという事や、魔力結晶を狙っているという事。それらの事を彼らは知って、俺なんかと仲良くしてくれるだろうか・・・


『前世でも、いじめられたことがないのに・・・』

俺は孤独を感じていた。


こうして、昼休みが終わり午後の授業が始まった。しかし、俺には全く頭に入ってこなかった。ただフレイとサムシーとヤンの俺に対する悪口だけが俺の耳に届いてきた。


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