第9話 竜族の歴史

 話の中でいろいろと疑問に思ったことをノートにメモをしていた。

『結界?父さん?皇帝と知り合い?竜族はドラゴン?成竜の儀を父さんは教えてくれなかったのなぜ?』

やはり一番衝撃だったのは、竜族本来の姿がドラゴンであるということだろう。じゃあ、なぜ生まれたとき人の姿で生まれてくるのか。そして、なぜ尻尾だけは残っているのか? 

 もしかして、カエルのように幼少期はおたまじゃくしで成長してカエルになるあれか?いや、そんなわけないか・・・


1つの疑問から様々な疑問があふれてくる。

ずっと考えていたかったが、先生の話は続いていた。


「・・・ですね。それじゃあ、まずは予定通り歴史の授業を行いますね。このルード皇国は今の皇帝により、およそ1200年前に建国されました。あなた達に教えるのはそのあたりの歴史からですね。文献が残されているのがその100年前である1300年前頃のものだけだからですね。私達の住むルード皇国は結界の加護に守られて容易に見つけることはできにくくなっていますね。この結界は、ルード皇国の城に隣接された神殿によるものです。ここまでは、皆さんも知っていたかもしれませんが、実はこの神殿は城よりも先にあったものだといわれています。1300年前からこの神殿はあり、竜族を加護してくれていたようです。今の皇帝はその結界を利用する形で、結界の及ぶ範囲でこのルード皇国を発展させてきました。神殿の横に城を築き、その周りに徐々に同心円状に町を作っていきました。そして、その周りに田畑や牧畜を作り今のルード皇国はあるのですね。」

そこでエレオノールが手を挙げる。


「結界はどのような効果を発揮するのですか?」


「この神殿が作る結界には3つの作用がありますね。1つは結界の近くに来ると竜族以外であるなら、不快感を示すということですね。そして、もう1つは外部から結界内を見た場合湖にしか見えません。だから、皆さんが結界の外に出た場合、湖に向かって歩いてくればルード皇国に戻ってこれます。」

またもエレオノールが質問をする。


「それでは、竜族以外でも不快感に耐えれば結界内に入ってこれるということですか?」


「そうだね。アギラは今不快感を感じているか?」


「いえ、まったく。」

俺に質問が飛んできたので、答えた。


「不快感は結界の外側でしか発生しないみたいだね。だから、その不快感を無視して湖に向かい、入ろうとしたらルード皇国に侵入したということもありえることですね。でもね、最後の結界の能力によって、私達の国の中はこの1200年間、侵略されるということはされていない。その最後の1つというのが、誰か竜族以外が結界をくぐったら、神殿に伝わるようになっていうるんだね。だから、皇国の兵士たちが侵入したものを倒したり、眠らせて魔の森に返したりしているんだね。それに、皇国の兵士は西の魔の森を巡回してるし、南の平地にも見張りがいるしね。このルード皇国は安全だよ。」


「けど700年前に人間が襲ってきたって聞いたぜ。」


「そうでやんす。人間と魔族が襲ってきたでやんす。」


「結託して竜族を攻めようなんて野蛮よね。」

フレイとその取り巻きの2人が憤る。


「確かにその戦争はあったんだけど、このルード皇国までは攻め入ることは出来ていないんだね。その戦争は正確には今から672年前に人間が南の大陸から攻め入って来たんだよ。私達は人間が海を渡って攻めて来ることを察知して、南にある平地のさらに南のアルカン砂漠で人間を迎え撃った。砂場での戦いは私達に有利に運んで、撃退することに成功したんだね。進軍してきた人間は全滅したって話だよね。魔族は少し遅れて西の大陸から攻めて来たそうだが、人間が全滅したのを聞いて戦わずして、東の大陸へと帰っていったって話だ。その時、実際はルード皇国の兵士はほとんど南に出払っていて、魔族に攻め込まれたら危なかったらしいんだけどね。人間が全滅したことに恐れをなしたらしいよ。」


「やっぱり、人間なんて野蛮なんじゃねえか。」


「そうでやんす。」


「私達も気をつけないとねえ。」

俺は話を聞いて、みんなの視線が集まってるように感じ下を向いていた。


「なぜ、人間と魔族は攻めて来たのですか?」

エレオノールは、場の空気に関係なく、疑問を投げかけた。


「攻め入って来た理由は、分からなかったんですね。多分領土を広げようとして来たのか、私達の魔力結晶を狙ってきたのか。私達の魔力結晶は外の世界では高値で取引されるらしいですからね。」


「なぜ、ルード皇国の位置が分かったのでしょうか?」


「多分分かってはいないかと思います。その後672年間はこちらの大陸の攻め入ってきてはいませんからね。分かってたら、また戦いを仕掛けてきたのではないでしょうか。先の戦争は、おおよその位置で、向かって来たと言われていますね。」

エレオノールは何か納得したのか。自分の本をペラペラとめくり、何度も頷いたり、考え込んだりしていた。


「では、今日は最後に、禁忌の洞窟について教えておきたいと思います。結界の西には魔の森が広がっているのは知っていると思いますが、その森の北に禁忌の洞窟があります。これから皆さんは課外活動で結界の外に出たりすることもありますが、その洞窟には絶対に近づいてはなりません。」


「近づいたらどうなるんですか?」


「洞窟に何かいるのですか?」


「へっ、俺が行って退治してやるぜ。」


「そうでやんす。フレイの兄貴にかかれば、イチコロでやんす。」

一斉にいろいろな声が上がる。


「その洞窟には近寄ってはならないというより、近づくことも困難でしょう。その洞窟内部と入り口周辺100m付近には結界が張られています。竜族の者が、入り口周辺に入ると強烈な嫌悪感と不快感を感じてしまいます。そして、今からおよそ1000年前に調査隊が派遣されました。その調査隊の1人が嫌悪感と不快感に耐えて、入り口付近に手をかけた瞬間に倒れたそうです。調査隊の何人かがその彼を救出し、皇国に連れ帰ったのですが、容態が悪化しその後亡くなったとあります。だから、それ以来禁忌の洞窟として、その洞窟に近づくのは禁止されています。あなた達も絶対に近づいてはならないですよ。」


「先ほど竜族だけと仰いましたが、竜族以外には効かないのですか?」

エレオノールは思いつくままに聞いた。


「それは正確には分かりません。動物などに目印をつけて放ったりすると、洞窟内部に入って行けるのは確認されているのですが、帰って来た動物はいないそうですね・・・それでは、そろそろ・・・」


そう言って時計を見ると、

「運動場に出て、格闘の訓練に移りますね。」


俺は体をこわ張らせた。体育の授業については入学前から聞いていた。

この学校では体育の授業とは格闘の模擬戦を意味するのだった。

この体育の授業を乗り越えるために今まで訓練してきていたのだ。上手くやって見せる。

そう決意して、運動場へと向かうのだった。

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