ヌナのための胸キュン?願妄

@namekojirr

拾い物(黄金マンネJK編)

残業続きでクタクタの帰り道。

降りだした雨はしとしと…なんて可愛いもんじゃなくて、やばいと思った時にはもう全身がずぶ濡れになってしまった。

(最悪…)

折り畳みを出すのももう馬鹿馬鹿しくて私はそのまま歩き続けた。


自宅マンションの前に着くころには雨も弱くなり、ずぶ濡れのカバンからキーを取り出しながらエントランスに駆け込もうとした途中で足が止まった。

(誰か、いる…?!)

入り口脇の植え込みの陰で何かが、誰かが動いた。

恐る恐る近づいてみると、ずぶ濡れのこどもだった。


「何、してるの…?きゃあ!」

「……も、無…理……」


声をかけると同時にガシッと足元を掴まれてそのまま倒れ込まれてしまった。

(なになになに?!この子なに!!めっちゃ掴んでるんだけど!!!!)

頭の中は大パニックで、足を掴む手をなんとか振りほどいて逃げるように自分の部屋まで駆け上がった。

バクバクする心臓をなんとか落ち着かせながら玄関にへたりこむ。

雨に濡れた服が体に張り付いて重たい。

(お、驚いた…思わず逃げてきちゃったけど…こども、だったよね…?)

部屋を濡らさないように玄関で服を脱ぐ。

どれも絞れそうでちょっと掴むと滴り落ちる水滴に、忘れていた疲労感がどっと押し寄せた。(あー!もうなんなのよ!)ぎゅっと握りたいのをこらえて足早にバスルームに向かう。濡れてボサボサ頭の自分とご対面をしてさらに疲れる。

(…うそ?!)バッと左耳に手を当てるが、退社まではそこにあったはずのものがなくなっていた。

(落とした…!?うそでしょ……あっもしかしてさっきのあの勢いで…)

濡れた服を洗濯機に投げ込みながらそこらへんにあるものを着てエントランスへ向かった。



(ない…落ちてない……あとは、さっきの植えこみか…)

部屋からずっと通った通路を探したが見つからないピアス。おそるおそるエントランスをでて植え込みの部分をのぞいてみると少年の姿は消え、ピアスもどこにもなかった。

大きくため息をつくと、まるでそれが合図のようにまた雨が降り始めた。


(はぁー…どこで落としちゃったんだろ…とりあえず部屋にもどろ…っ)

「ひっっっ」


がっくりと肩を落として踵を返すと冷たいものにぶつかった。

おどろいて前を見ると、さっきのびしょ濡れの少年が立っていた。


「…オネーサン、お腹すいた…」

「は?」

「オネーサン、ごはん」

(…カタコト?…よく見ると可愛い顔…)

「よくわかんないけど…いいよ、おいで」

「ごはん?」


小首をかしげて見下ろしてくる姿が小動物のようで、心臓がギュッとなる。


「そう、ごはん」

「はいっ!」

(か、かわいい……)


近所の目を気にしながら、忍びのように部屋に連れ帰ったところでとハッと我に返った。

(何してんの私?!これって誘拐?独身女が少年を誘拐って出ちゃうパターンじゃ?!)

一気にいろんなことが頭をぐるぐる回り始めて玄関で固まったように立ち尽くしていると、その横をびしょ濡れのままの少年が通り過ぎていこうとして更に我に返る。

「だめ!そのまま入っちゃダメ!」

つい大きな声を出してしまったら、ビクッと肩をすくめてこちらを振り返る。

「あ、ごめんね大きな声だして…。部屋が濡れるからここで服脱いでこっち来て」

あまり理解していないようだったのでジェスチャーをすると理解したのか、服に手をかけ始めた。


自分が入るつもりだったお風呂の湯加減を確認し、元カレの置いていった着替え用の下着をおろした。

(あの男のために用意した下着がこんなところで役に立つとは…)

物思いに耽りかけたところでガラッとバスルームのドアが開いた。

「体冷えてるだろうからお風呂はいって……えぇぇ?!ちょ、ちょっと…」

タオルも用意して振り返ると今度は熱いものにぶつかったと同時に捕まった。

「ヌナ…ありがとう。優しいヌナ、好き…」

「え?いや?ちょっと君…おちついて…私そんなつもりじゃないから…」

「ヌナ、嫌い?」

「いやだから君ね、一旦おちつこ!ね!ほらさっさと風呂入って!!!!」


なんとか引きはがし、風呂場に押し込んでリビングに逃げてきた。

心臓はさっきの比ではないくらいにフル稼働だ。

(どうしよう……変な子拾っちゃった…アソコ当たってたんだけど…アハハ)

あまりの展開に笑いが込み上げてきた。

雨の日に拾ってしまった少年にいきなり下半身を押し付けられて告白されるなんていうレディコミも真っ青な展開に自分の理解が追い付かない。

(…とりあえず、ご飯作るか……)

理解が追い付かないなりにやることを整理しているあたりに自分の成長を感じながら冷蔵庫の中をのぞき込みそっと額に手を当てた。

ビールビールビールコーラビール

冷蔵庫の奥にはいつから何が入っているのかもわからないタッパ。

これを開けるのは今ではないと判断し、そっと元に戻す。

(だめだ…あとはインスタントとお菓子か…)

棚の上のカゴの中にとっておきインスタントをしまってある。

そこへ手を伸ばそうとしたとき、カゴが浮いた。

(はっ!!!!)

振り返ると用意した下着を身に着け、バスタオルを無造作に肩から掛けただけの少年がカゴを抱えて中を物色している。

「……君、どうしてあんな所にいたの?」

これと、これと、これ…と言いながらラーメンの袋を取り出してカゴを元の棚に戻し、何故か指さし確認をした少年。

ラーメンの袋を取り上げて、テーブルにつくように指さす。

まるで取り調べのように向かい合って初めて少年をじっくりと観察した。

(悪そうな感じはしないけど…さっきのは何だったんだろう…)

どうやら股間は落ち着いているようだ。

(それにしても…若そうに見えるけど…この体つきは男だよね…)

肩にかけたタオルの間からのぞく引き締まった上半身、整った顔、さっき感じた力強さ…あまりにもぶっ飛んだ展開に溜息がでる。

「ねぇ君、どこから来たの?」

「………忘れた」

「君の名前は?」

「ん~……忘れた」

「どうしてあそこにいたの?」

「………わかんない」

(さて、困ったな…とんでもないの拾ったわ…)











    

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