第9話 おやすみから、おはようまで
――それではマスター、さっそく就寝しましょう。明日は私が起こして差し上げます。起きたい時間を教えてください!
セリはスマホの代りを務める気満々のようだが、どこまでできるだろう?
――マスター?
「ああ。じゃあ7時起床で」
つい僕が指輪を撫でながらリクエストすると、セリは照れた声をだす。
――りょ、了解です。マスター。
直後、眠気が僕を襲った。
「おやすみ、セリ」
――はい。おやすみなさい、マスター。
僕は指輪を着けたまま、まぶたを閉じて眠った。
◇
翌朝、セリは見事にスマホの代りを務めた。
彼女は美声で僕に優しく語り掛け、最後は指輪をバイブレーションさせて僕を起こしたのだ。
まさかバイブ機能がついてるとは……やはり夜のおも
――おはようございます、マスター。
「お、おはよう」
その後、僕は家族と朝食を済ませる。
両親に昨日のことを追及されながらの食事は実に有意義だった。
――それは皮肉ですね、マスター。
その通り。
説教の間、時折聞こえてくるセリの声だけが唯一慰めだった。
――恐縮です。
最終的に両親は、昨日の罰として僕に今日一日の外出禁止を言い渡し、スマホを没収した。
だが、別になんてことはない。
なにせ外出禁止と言われても、異世界へ通じる入口が自室の天井にあるのだから。
――それに、私がいればスマホも必要ありませんしね。
ウン、ソウダネ。
――……マスター?
「セリの言う通りだ! 僕にスマホなんて必要ない!」
うん。今日は絶好の
それから僕は家にあった脚立を使い、再び異世界へ旅立った。
◇
ありがとう。そんな所までセーブポイントである。
――マスター、セーブポイントではく、聖ブポイントです。
「わかってるよ――っと」
僕は周囲に人がいるのを思い出し、胸の内でセリに声をかけた。
セリ、これは誤字じゃない。それに誤字修正のタイミングは話し合ったろ?
――もちろんです。なので私は先程の誤字を修正してはおりません。あくまでマスターと会話を楽しんだだけです。その証拠にあちらを。
セリは僕にある方向を見るよう促す。
そこには聖ブポイント像の前に立つ、一匹の象がいた。
――「象」ではなく「像」ですよと。私は修正しませんでしたので。
この朱鷺、僕はついセリの笑った顔を創造してしまった。
――「時」と「想像」ですよ、マスター。
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