海王の誓い 〜Black Cross mission 0〜

mission0-0 序幕

　人を傷つけてはいけません。

　人のものを盗ってはいけません。

　人に嘘をついてはいけません。

　悪さをしたら、世紀末に破壊神がお仕置きにやってくるから。

　この世界に住む者なら、誰もが幼少期に創世神話を読んでそう学ぶ。

　だが、世界から争いはなくならなかった。

　それどころか、ついには強大な二つの国——工業大国ガルダストリアと、呪術大国ルーフェイ——による五年にも及ぶ長い戦争が勃発。たくさんの人々が死に、たくさんの略奪が起き、たくさんの嘘が世界を行き交い……ついには破壊神が誕生して『終焉の時代（ラグナロク）』が幕を開けた。

　ただし、その戦争が全て陸地で繰り広げられ、海では一切血が流れていないということを、知る者は少ない。

　ましてその海の平和を築き上げたのが、シャチに育てられた一人の少年であったことなど。

　彼はなぜ、シャチに育てられていたのか。

　彼はなぜ、人間社会に関わることにしたのか。

　彼はなぜ、穏やかな海を守ることができたのか。

　少年の数奇な運命の物語の幕開けは、二大国の戦争が起こる少し前に遡る——。