黄色い百合の花言葉 4







「手紙がどうしたって言うんだよ」



言いながらも恵一は、部屋の隅からビジネスバッグを持って来て、右手を突っ込んだ。


昼間に取って来た投函物の塊をごそりとテーブルの上に出す。



不動産屋のチラシに、ピザ屋の広告。ネイルサロンにまつエクのクーポン。

それらに混じって幾つか茶封筒が見えた。



数えると5通。




どれも同じ形だ。




閉じ口を見ると、全て液体のりで封がしてあって、一度湿気って乾いた紙に、シワが寄っていた。



あのアパートには数年住んでいるが、届くのは企業からのDMばかりで、明らかに人の作業の形跡のあるものなど、ほとんど受け取らない。

それを思うと、今更ながら、妙だと感じる。







恵一が、茶封筒の内の一つの封を切ろうとすると、萌に止められた。


萌は恵一の手から優しく手紙を奪うと、あらかじめ決められた順でもあるかのように、手紙を横一列に並べなおす。


「時系列に左から並べてみたから。投函が早いものから開けようよ。これが一番先」


「お前、そんなこともわかるのか」


「わからないけど、なんとなく」



さっき開けようとした封筒が4番目になったのを見ながら恵一は差し出された手紙を受け取って封を破った。

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