足 4
「えっ?」
「どうした、石橋」
陰気だとか、傷の話だとか、言葉の選び方が酷いなと思う前に、恵一の頭にはいつかのストーカーの姿が浮かんでいた。
週末、気まずくなってしまった萌とどうやって過ごして良いかわからない恵一は、
萌がバスケ部の休日練習に行っているのを良いことに出かけることにした。
新宿の自宅のことも気になる。
一度様子見に家に戻るならば、今を逃す手は無かった。
ストーカーも怖いと言えば怖いが、これまでだって妙な男に付きまとわれる機会はそれなりにあったのだ。
「まあ、どうにかなるだろ」
いざとなったら、得意の少林寺拳法でどうにかしよう。
日は高く、幽霊が出るような雰囲気はまるでない。
マンションに着くと、とりあえずポストに溜まっていた投函物をカバンの中に放り込んだ。
放り込みつつ、ポストを見られたら数日連続で不在にしていたことがバレるなぁと考える。
部屋に入ると、密かに恐れていたことはやはり、起きていなかった。
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