第11話

呼吸が苦しい。


彼女が私を覗き込んでいる。


私の顔に雨が数滴降った。


目を閉じるとたくさんのことを思い出す。


私の上にある彼女の顔が雨雲のように見えた。


視界が滲む。


あの日の彼から見た私の顔も、同じだったのだろうか。


私は涙を流せない。


死にゆく彼に言葉をかけることも出来なかった。


彼女が羨ましく思えた。

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