practice1~練習1~ 3
「……そういう美桜は、春輝とどうなの?」
親友と幼なじみがいい
二人はクラスも違うし、
(それがいまじゃ、毎日のように一緒に帰ってるっていうね)
以前、それとなく春輝にも聞いたことがあった。
明朗快活な彼にしてはめずらしく視線を泳がせ、はぐらかすような答えが返ってきた。
「まあ、なりゆきで?」とか。
(あのとき、これは何かあるなって直感したんだよね……)
そもそも春輝は、
美桜とは話があうと言っていたけれど、きっとそれだけではないだろう。
対する美桜も、春輝との関係を指摘され、急にそわそわと落ち着かない様子になる。
「えっ!? わ、私は、別に
「普通って?」
「普通は普通っ! あかりちゃんは?」
美桜は声を裏返しながら、
飛び火したあかりは「え?」と目を丸くはしたが、すぐに
「いまは私のことより、なっちゃんの告白作戦を考えないとね」
言うが早いか、あかりはスケッチブックに鉛筆を走らせる。
〝告白作戦パート2〟の文字が見えて、夏樹は鼻の奥がつんとするのを感じた。
「あかりちゃん、ありがとう。私、あきらめずに……」
「ゆきちゃーん! 私たちも手伝うよ?」
「雑草を
夏樹の決意表明をかき消すように、開け放った窓から黄色い声が飛びこんできた。
何事だろうと顔を見あわせ、三人そろって窓へと
「結構な悲鳴だったよね。まさか、芸能人?
女子たちの輪の中心にいるのは──。
「あれって、
「
クラスメイトである綾瀬
(あかりも意外と初対面はダメなほうだけど、
美桜も春輝を除き、男子とはあまりしゃべるほうではなかった。夏樹が一緒にいれば、優や蒼太とも会話するが、自分から話しかけていくタイプではない。
(こゆき君、いい人なのに……。もったいなーい!)
マンガの貸し借りをしている夏樹としては、なんとも歯がゆい
だから、ついつい彼のことを語るときは熱くなる。
「長かった前髪を切って、眼鏡をコンタクトに変えたら、実はカッコよかった! なんて、最近の少女マンガでもなかなかいないよね。こゆき君、すごいよー」
「なっちゃん、感動するのそこなんだ」
「二人でマンガの貸し借りしてるよね。席も近いし、結構話してなかった?」
ぽやっとしているようで、あかりは人をよく見ている。
夏樹は感心しながら、いきなり
「こゆき君ってね、やさしくて、本当にいい人なんだよ。だから部活にまで押しかけられて本当は困ってるんだけど、傷つけずに断るにはどうしたらいいか
「……難しい問題だね」
美桜は実際にあれこれ対策を考えていたようで、返事があるまでに間が空いた。
夏樹も名案が浮かばすに
「それにしても綾瀬君、なんで急に髪を切ったんだろう? 高校生活最後の夏休みを前に、キャラ変したかったってこと?」
天然ゆえの直球すぎるあかりの発言に、さすがの夏樹も「ははは」と笑うしかない。
美桜だけは何か気になることがあるのか、ぼそりとつぶやいた。
「……本当に、それだけなのかな」
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