時の黙示録〜ジーズ・ビー・アワー〜

幽谷澪埼(第二垢

Prolog

始まりの物語

「……。」


 ──何処どこだ。


 遠くからザワザワと人が個体識別用の記号名前という名の飾りを呼ぶ声がする。


 ──問題ない。目標を探すのみ。


 だが気にする意味も必要性もない。思考から存在を切り離し、えた目標ターゲットを追尾することに専念する。

 ザッと薄暗い森から抜け出て、広い場所に出る。目の前に広がる草原の中心に目標を視つける。爽やかな風が気持ちいい。が、それどころではない。


 ──視つけた。


「──だれ? ワタシの…、しないで。」


 目標はこちらに気づく。草原の草が、空に浮かぶ風が、森の木の枝が、を拘束しようと手を伸ばす。

 だがそれは全てくうを掴ませられる。

 何故なら…──


。」

「なッ……」


 その全てはに触れる寸前で、砂とかした。

 そして少女は苦悶の表情カオを浮かべ、首を押さえる。


「──。」

「くッ…あ、ぁ、あ……あぁああぁぁああああぁぁぁあァァあああッ!」


 少女は唾液を飛ばしながら叫び、涙を流しながら悲鳴を上げた。

 そして──…


 、砂とかした。

 砂を撒き散らして姿を、存在を、ことごとく抹消した。


「──ッ! ッ!」

「…………。」

「眠れ、白雪姫のごとく。」

「…………そうさせてもらう。」


 対象が砂になった瞬間、別の声が詠唱を刻み、の身体から深紅の鎖が浮かび上がり、動けないよう縛る。

 それ即ち、ということ。


 ──また、仕事の時までだな。


 そうしてそっと力が抜けるように、瞳を閉じて闇に身を投じる。



 ──世界の終わりなんて、唐突だ──


 ***

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