プロローグ



 今日私は、生まれて初めて告白された。

 ゆうに照らされた、放課後の屋上で。

 秋のりようふうやさしくほおで、ヒグラシと芸術コースから聞こえるすいそうがく部の練習音が鳴きわたるなか。

 向かい合って立つクラスメートのおりさかくんが、私を見下ろしておだやかにほほんだ。

 すずさん。あなたが好きです。……僕と、付き合ってくれませんか」

 今までほとんど接点のなかった折坂くんの顔を初めて真正面から見て、ああ、折坂くんって結構整った顔してるんだな…ってことに気付く。

 意思の強そうなスッと切れ上がったじり

 秋風になびく、やわらかそうなくろかみ

 そして、形のいいくちびるからつむがれた、告白の言葉。

 ──それはまるで。

 少女まんの1コマを切り取ったかのような。

 れんあいごとにうとい私でさえ眩暈めまいがしそうなほど、キラキラしたしゆんかんだった。






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