放課後ヒロインプロジェクト!/藤並みなと
角川ビーンズ文庫
登場人物紹介/序章
◆登場人物紹介
高1。漫画『学園ハロウィン』が大好きで、ヒロインに憧れる。慧にヒロインプロデュースを頼むが……?
ゆずのクラスメート。無愛想で、クラスでも一匹狼。実は少女漫画家の芹野井ちさと!
ヒロプロ①
ゆずのクラスメート。女子に超人気の正統派美形。あだ名は「はちみつレモン王子」。
ヒロプロ②
ゆずの幼馴染。中世的な雰囲気のイケメン。バンドでボーカルをしている。
ヒロプロ③
高2。華やかなルックスで人望も厚い生徒会長。慧の従兄。
学園ハロウィン
『花とリボン』で大好評のうちに連載を終えた少女漫画。芹野井ちさとのデビュー作あおり文句は『ちーたまのリリカル☆モンスターコメディ』。
◇
ゆずSIDE
「運命を感じました! 付き合ってください!」
「無理」
「早っ!
「放課後の体育館裏に呼び出された時点で予測はできていたし、その気がないのにもったいぶって返事を
たった今、告白されても
「そもそも相原、別に俺のことを好きじゃないだろう」
「好きじゃないって……どうして?」
「本気で
な、なるほど……でも何なんだろう、この人の冷静さ。
私は本気じゃないにしても、初めての告白にそれなりにドキドキしてたのに……やっぱりイケメンだから告白され慣れてるのかな?
サラサラの
あんまりしゃべらないけど、声もいいしね。そっけないのに、不思議と甘く
……しまった、ハードルが高すぎたか。でも、「こいつならイケる」みたいな考えでアプローチするのもどうかと思うしなあ……。
うーん、と
「
冷ややかにそう言われて、かあっと
「別に、私はそんな理由で彼氏が欲しかったわけじゃないし!」
「じゃあ、なんで告白なんてしたんだ?」
「──私のおばあちゃん、七十歳過ぎてからツイッターを始めたり、ロッククライミングに目覚めたり、世界一周旅行にチャレンジしたり、すごくアクティブな人なの」
「…………?」
「いつかSASUKEに出演するのが夢とか言って、
思い出すと、じわっとまぶたが熱くなり、
以前のおばあちゃんなら、絶対に考えられなかった姿……。
「そんなこと言わないでよって言ったら、おばあちゃん、弱々しく笑いながら『ゆずちゃんの
「なるほど。がんばれ」
ギュッと
「ちょっと待ってよ! この話を聞いてもまだ協力しようと思わないの? やっぱり冷血漢!」
「俺は
「私だって
「……運命?」
慧君が足を止めて、振り返った。
「その態度からして、
あれ、意外に
「これよ!」
「!」
それは、月に二回発行される少女
「一ノ瀬君の筆箱に、これと同じシャーペンが入ってるのを見たんだよ。私、『学園ハロウィン』大っっ好きなの。あんなに絵が
「…………」
テンション高くしゃべる私の前で、さっきまでサイボーグみたいだった慧君の顔が、かすかに赤くなっていた。
男子で少女漫画が好きなんてバレたら
「別に照れることないよ、少年向けでも少女向けでもおもしろいものはおもしろいんだから! 一ノ瀬君も『学ハロ』好きなんでしょ? 同じ学校の、同じクラスで、同じ漫画が好きな男子がおそろいのレアなシャーペンを持ってる……運命的じゃない!?」
「──全然」
慧君はぶっきらぼうに全否定すると、くるりと背を向けて早足で
「待ってよー! そんな
「放せ、俺は忙しいっつってんだろ!」
「ダメ! せめて『学ハロ』について語ろう!」
「ええい、しつこい!」
しがみついて止めようとする私を引き離そうと、慧君がばっと腕を
「ごめん、私のせいで──って、これ……」
「
慌てて拾い集めようとした紙の束は、漫画の
私がときどき遊びでノートに
しかも、その
「……どういうこと? もしかして一ノ瀬君が……『学園ハロウィン』の作者、
「…………」
慧SIDE
「……どういうこと? もしかして一ノ瀬君が……『学園ハロウィン』の作者、芹野井ちさと先生……ってこと?」
「…………」
相原ゆず。ショートボブにくりっとした大きな
俺が彼女に
あと、「食いしん
つーか、四月にここ私立
そんな相手にいきなり告白なんかするなよ
まさか相原が、俺の漫画の愛読者だったなんて……。
正直ものすごく嬉しいし、ありがたいのだが、面と向かってべた
俺が『花とリボン』の新人賞を受賞したのは中学二年の冬。
中三になったばかりの春に読み切りのつもりで描いたデビュー作『学園ハロウィン』が想定外の
学校に通いながら、高校受験や進学も
同じ高校で、俺が漫画を描いていることを知っている
意図的に
「否定しないってことは芹野井ちさと先生なんですよね!?」
「先生はやめてくれ。あと、敬語も」
「すごいすごいすごいすごい! あの天才高校生作家、ちーたまが目の前に!」
「そのあだ名もやめろ」
『学ハロ』の表紙にはいつも『ちーたまのリリカル☆モンスターコメディ』という
どうして『花とリボン』編集部って作家に
げんなりしながら遠い目をしていたら、
「なんだ、いきなり?」
「先ほどのご無礼をお
「……いや、達人とか全然」
「もう彼氏になってなんておこがましいことは言いません! 代わりに──私をヒロインにしてください!」
…………はあ? 何を言い出すんだ、こいつ……。
「私も少女
「──そんなわけあるか! 無理に決まってるだろ」
「お願いします! 私のヒロインプロジェクトに協力してください!」
「断る。手を離せ」
「いや! 引き受けてくれるまで絶対離さない! お願いお願いお願いお願い──私を、最強のヒロインにしてください! どうか! なにとぞ! ご
相原ゆずは、しつこかった。
いくら断っても引き下がらないから、一方的に話を打ち切って帰ろうとしたけれど、
地面にはずるずると、彼女の足の引きずられた
……ああ、もう!
「いい加減にしろ!」
「聞き分けの悪い奴は、痛い目見ないとわからないか?」
「……っ……」
その
あまりにしつこいから、
罪悪感に包まれた次の
「──生壁ドン、入りましたー!」
グッとガッツポーズをした相原が、感
「さすが
相原の
……あ、こいつ、
うすうす気付いてたけど、救いようのない大馬鹿者だ。
「しかも『聞き分けの悪い子は、お仕置きだ』なんてドS&
「お仕置きなんて言ってねえ! 勝手に
「やっぱりナチュラルに少女漫画的なことできるんじゃないですか~。プロデューサーやってください!」
「やらないっつってんだろ! 放せ! とっとと
「いや! 離れて欲しかったらイエスと言って! 言うまで絶対絶対絶~っ対このまま離さないんだから!」
──相原は本当にあり得ないレベルでしつこくて、その後もずるずると引きずられたままどこまでも食らい付いてきた。
ずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずるずる……。
「は・な・れ・ろー!」
「いやー! 引き受けてくれるまで死んでも離れないいいいいいいー!」
結局、俺は根負けして、プロデュース業を引き受ける
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