袋小路の扉
十笈ひび
1 人間不信
「人間不信にもいろいろあるのでしょうが、僕はある時から自分で望んでそうなったんです。
だって、僕にはもう、人を信じたり……まして、人を好きになったり、愛したりといったことが、とても軟弱な、あまっちゃろい感情でしかないような気がしたからです。
人というものは、みな常に自分自身の利しか考えることができず、そのせいで平気で嘘だってつくし、裏切りなんてのは人が生きていく為には当然の行為なんだと。
騙される者が悪いし、嘘を見抜けなかった者が悪い。
僕はね、子供の頃から、既に世界は欺瞞に満ちあふれていることを肌で感じていたんですよ。
そして、自分が成長する過程で、普通の子供が抱くような、大人になる事への憧れなんてものは全く抱かず、ただひたすら来たるべき冬の時代に備えることしか考えなかったんです。
人は嫌いになりこそすれ、好きになることなんてあり得ないだろうと思いました。
信用できる人間など、この世にはいないと思っていたんです。
生きるには鉄の鎧がいる。そんな鎧で自分自身を覆い尽くしたかった。
それが、生きていく為に必要だと感じた。
友達なんて、いらないと思いました。
友達なんて……ありとあらゆる誘惑に引きずり込もうとする、自分自身を弱くする人間にすぎないんだと……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます