ジオラマの夜


物語は、ある少女が幼馴染の少年の趣味を知ったことから始まる。


「ねぇ、マサシの趣味ってなんなの?」

「なんだよ?突然」

「いや、マサシっていつものほほんとしてるから、趣味とかないのかなぁ?って」


少年は考えるような表情を浮かばせ、


「ジオラマ…かな?」


そう呟いた。


当然、少女には縁のない言葉。


「何それ?」

「まぁ、知らないよなぁ。女子だもんなぁ」


そんな会話をしていると、少年は呟いた。


「家に来て。見せてあげる」


そう言い、少年は少女を自宅へ案内した。

少女は『ジオラマ』という言葉を分からないまま、少年の家に入った。


少女は少年の部屋で、あるモノを見せられた。


「ほら、見て」

「…うわぁ…すごい……」


少女はただ、そう漏らした。


それは、ジオラマと呼ばれるものだった。


ジオラマとは、自分の見た風景、光景、または空想の風景、光景をモデルに、その風景、光景と似たような世界を作る言葉だ。


少年は、そのジオラマを、趣味にしていた。


「これ自分で作ったの?」

「うん、素材はお母さんに買ってもらってるけど、あまり高いものは使わないでやってる」

「すごいねぇ」


そんな会話をしながら、少女はジオラマを鑑賞した。

少年も、嬉しそうに、少女とジオラマを見つめていた。



夜、少女はどこかに立っていた。


暗い世界。月夜が照らし、少女がいるのは、ある田舎の踏切の前だった。


『…ここは?』


少女は辺りを見回す。いつここに来たのかも分からない。そもそもここがどこか分からない。…ただ、どこかで見たことがある。それも最近。


少女はふらふらと辺りを歩く。


ふと、少女は何かを見つけた。


それは1人の少年だった。


闇に紛れて顔までは分からないが、どこか見覚えのある。

少女が少年の顔を見ようと前へ進むと、少年は何かに気づいたように闇の中へ消えていく。


『待って!』


少女は叫び、闇の中へ走る。


だが、闇は闇だ。何も分からなくなる。


そう、さっきの風景も、


さっきの少年も。


さっきの――




気が付くと、少女はいつものベッドで目を覚ました。


少女の母が少女に大変よと揺さぶる。






「マサシ君が、行方不明になったって!」





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