第8話 苦労家のシスターズクオレル
下の階から爆発音が聞こえた。
ああ、やってるなあ…と思い、暇だから見にいこうと、紐を結び直す。
毎年恒例。この時期は毎回コレだ。
私は姉妹の部屋のドアを開ける。
「何いってるんですか!?頭とち狂っていますね!お姉さま!」
「はあ!?あんたこそ頭おかしいんじゃないの?バーカ!」
「ははっ!バカっていった方がバカとは良く言いますね!自分の頭かっさばいて見てみな!きっとその脳みそは蟹味噌よ!」
「蟹味噌は脳みそじゃないわよおおおお!」
「おっ東風、来たな」
部屋には熱気プンプンの姉妹とそれをケラケラを笑いながら鑑賞するテポとミサがいた。
「今どんな感じ?」
「んーどうだろ、今回は何時もに増して激しいからねぇー」
何時もは仲のいい姉妹がこうなっているか、それは。
「秋はね!芋天ぷらよ!!お姉様はこの気高さが分からないの!?」
「ええ!分からないわ!そんな物!秋はスイートポテトよ!」
「ああ!そうですね!?あの味噌汁につけて食べる幸せが解らないなんて!惨め!悲惨!」
「おおお、凄い凄い」私はポップコーンを取り出す。
「んーでも、妹は勢いがあるけど弁論がぐちゃぐちゃになりやすいね」ミサが焼き鳥を食べながら言う。
「あら?こういう感じも好きよ?」テポはガリガリちゃんを食べている。
この熱気はさながらサッカー観戦。
毎年恒例の食姉妹喧嘩。
去年は確か、林檎タルトか林檎パイかだったか。今年は芋らしい。
「さーて!そろそろやりますか!」テポが紙切れを3枚取り出す。
「おっ?やりますか!」私は一枚を取る。
「今回は…」と、続けてミサが引く。
そして、しばらく皆考え込む。
すると「私は…妹ね!」と、ミサは真っ先に答え、紙切れに「妹」と書き込む。
続けて私が「姉ね!」と答え、紙切れに「姉」と書き込む。
「テポは?」
「……妹!」
「おおおおおお」
そう、賭けだ。
「よし、じゃあ皆、一万づつだして!」
と、テポが言うとミサと私は机にそれぞれ一万づつ出す。
「よし…」
皆、ここから緊張感が増す。
ルールは至って簡単。
賭けた人が泣いたら負け。
つまり、今回は妹が先に泣いたらテポとミサがそれぞれ一万五百円を掴み、姉が泣いたら、私が三万円を掴む。
「あんたねぇ!ほんとぉーにバカよの!」
「あっははは!姉様!お主もバカよのう!」
「ほらー!妹!あなたに賭けたんだから泣けー!」
「姉ー!泣きなー!我慢は続かないよー!」
「あんたは…」
「姉様…」
「泣ーけ!泣ーけ!」
端から見ればクズだと思われるこの行事もここでは数少ない娯楽なのだ。
数分後、白熱と化した会場にアンモが入ってきた。
…それは試合終了の合図。
「皆ー芋ご飯できたわよー?」と、アンモが言うと今までの気迫はどこへやら。
「「はーい!」」といい部屋から出て行った。
「あーあ、引き分けかぁ…」ミサはがっかりとした様子で一万円を取って部屋に戻った。
「ふう…今回は良かったねー」といい一万円を持ちテポは部屋に戻る。
「私も寝よ」
部屋に戻り、布団に潜る。
その時は深夜1時だった。
「まったく…あなた達は…」
「ふふん…こうやって喧嘩すればこんなご馳走をたべれるもん」
「あなた何時ももじもじしてるのってまさか演技だった…とかないわよね?」
「ふふっ…まさか…ですよ」
謹んで贈る生活日記 宇論 唯 @GeePerAmmo
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