第11話 好きな次回予告は北〇の拳の次回予告です
「ベネットも加わって七人か。もう戦力は十分ではないかね? あまり大人数になっても身動きが取りにくくなるぞ?」
「…………」
ブラックの問いかけ。もっともな話だ。
だが、ラルフはいまいちこの七人に足りないモノを感じていた。
「……確かに戦力としては充分かも知れない……だが、何か……何かが足りないんだ……」
「……? その足りないモノとは、例えば何でしょう、ラルフ殿?」
「……これから俺たちは盗賊が巣食う遺跡に挑むわけだ。連中は当然犯罪者で裏社会を渡るような悪人なわけだ。単なる魔物の類いとは違う」
「……つまり?」
「……我ながら恐ろしいことを言っていることは解っているが、必要なんだ――――悪人そのものの心理や手口を読み取り、そんな賊に通用する悪人がな」
「な、な!? 勇者ともあろう御方が……罪人を仲間に加えると!?」
「もちろん、最後まで味方でいてくれる範囲内で、だ。どんな罪人でもいいわけじゃあない。必要なのは『悪』の頭脳と技だけだ」
「……毒を以て毒を制す、というわけかね……くくく……私ならともかく、確かに勇者の考える策とは思えんな」
「……し、しかし……そもそもそんな戦力になるような罪人を何処で見つければ――――」
「――はうあァーっ!?」
「!?」
突然、ベネットが奇声を発した! 当然一行は驚く。
否。発しているのは奇声だけではない。
ベネットの頭の耳がぴん、と尖り、まるでアンテナを受信したかのように怪音波が発生している……。
「――来たにゃ、来たにゃ! アチキたちの『次回予告』がァーッ!! ぬんっ!!」
「……『次回予告』……ですって?」
途端にベネットはぎこちないマリオネットのように身体を振り、次々と何やらポージングを取り、瞳を星のように煌めかせる。そして、こう叫びだした。
「『……賊の巣食う遺跡攻略を前に何かが気に掛かるラルフッ!! 果たして悪なる仲間とは!? この一行にもたらすは成功か!? はたまた破滅かッ!? ……次回! 【極悪! 牢獄の中の悦楽主義者!? フリーダムな囚人】乞うご期待ィーーーッッッ!!』」
「…………」
突然のベネットの奇行に、一行はしばし沈黙した。
「……はっ!? アチキの『次回予告』が発動したにゃね!? 次に取るべき行動はわかりましたかにゃ!?」
「……べ、ベネット……『次回予告』って……何かしら?」
「んだよ突然。牢獄とかフリーダムとか。ROCKじゃあなくてどっちかっつーとCRAZY気味だぜ」
正気に戻ったらしいベネット。喋った内容は覚えていないらしい。
だが、ベネットは得意気そうに胸を反らし、エッヘンと勝ち誇ったような顔をしている。
「ふふーん! アチキの『次回予告』を舐めにゃいで欲しいにゃ!」
ベネットは指で自らの猫の耳を突つきながら続ける。
「『次回予告』は未来を予知するアチキの超能力みたいにゃもんにゃ! TVアニメの次回予告みたいでちょい抽象的にゃけど、次にどんな行動を取り、どんな運命が訪れるか解るはずにゃっ!!」
「……超能力!? それは凄いな……予知能力なんて……」
「……ふーむ。脳に秘められた未知の能力か……ますます研究対象として興味深い…………」
「ギミャアーっ!! もう、この人恐いもおおおおおおんんんんんっ!!」
ブラックの好奇の目を嫌悪し、ルルカに抱きついた。
「まあまあ! ベネット、凄いじゃあないの。次に取るべき行動が解るなんて。この耳も関係して――――」
ずるっ。
「――――えっ?」
ルルカが手元を見ると――――ベネットの頭に乗っていたはずの猫の耳が取れた。
耳には髪と同系色のカチューシャが付いている。耳の部分はよく見ると本物のアンテナのようなピンらしき金属が付いている。
「――ああっ! 何も聴こえにゃいにゃ!! これは補聴器でもあるんですにゃ、返してくださいにゃ!!」
そう叫んでルルカの手から猫耳を取り返し、頭にパチン、と留めた。
「……取れんのかよ、猫耳!! 作り物だったの!?」
冒険者稼業で様々な亜人種と行動を共にしたこともあるウルリカもツッコミを入れる。
「猫人であることに間違いはにゃいっ!! でもこの補聴器が無いと何も聴こえない上に『次回予告』も発動しにくいにゃ! 猫人のアイデンティティーにゃからデリケートに扱うにゃよ!?」
「……ま、まあそれよりもベネット殿は牢獄、囚人と仰った。……そうだ! 罪人なら捕らえておりますぞ、王国の北端の刑務所に! ……悪人を仲間にするというのはまだ得心がいきませぬが……案内いたします!」
こうして、ラルフ一行は刑務所へと向かった。
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例によって小さな国土の王国。刑務所にもすぐに辿り着いた。
中は仄暗く、硬くブ厚い石の壁の鉄格子越しに入る日光と壁のランプだけが光源だ。
「……牢の中にいる囚人に御用ですか? ならば鉄格子越しに話し掛けてください。当然、中には凶暴な輩もおります。十分気を付けて……」
刑務所にいる看守がそう告げると、ズラリと並ぶ檻のある区画に通してくれた。
――――檻の数は平和な小国らしく、四つしかなかった。それぞれの檻に一人ずつ……囚人が入っている。当然扉は固く施錠されている。
「……よし。みんな手分けして、囚人の様子を見てくれ。くれぐれも気を付けてくれ」
ラルフたちはそれぞれの檻に近付き、囚人の様子を見る。
しばし話し掛けたり、顔色を見て様子を見てみた……。
「……ヴェラー! そっちはどうかな?」
「こっちゃ学者さんだぜー! 自分の説いた学説が異端扱いされて投獄されちまったんだとー! まったく、人は見かけによらねえぜ。どの業界でもROCKな奴ァいたもんだ!」
「……そうか。ルルカー! ベネットー! そこはどうだー?」
「……駄目ですわー……寝惚けているのか、酔っ払っているのか、自分が何処にいて何をしているのかも曖昧そうな……意識が混濁している男性ですわ」
「こいつァすげぇにゃーっ! 酒と色んなクスリが混ぜ混ぜになった何かを下回るヤバい臭いがプンプンするにゃー! とても連れていけそうもにゃいにゃあー!!」
「薬物中毒か…………ウルリカさん、そっちはどうです?」
「……線の細い男の子よ……囚人なのに何故か身なりは高級感あるわね。……どうも、そっちの檻にいる男に気があるソッチ系みたいよー……これ、駄洒落じゃあないからね?」
「……となると……」
「あとはこの檻の男のみ、ですな……」
「そうだな。……そこの囚人。話がある!」
ラルフが呼び掛けると、男は寝そべっていた粗末なベッドからむっくりと立ち上がり……ゆっくりとこちらを向いた。
「……さっきからゾロゾロとォ……このムショん中探り回ってる連中がいると思ったがァー……ふへへカッカッカッ…………なァーかなか男も女もべっぴんさん揃いじゃあねえええかあああ〜…………ひひひひひ…………」
ラルフ一行を
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