03 異世界アイノカルア

47 異世界に来てみたのだけど


 異世界、そう異世界、クソ寒い異世界、凍え死そうなくらい極寒の異世界。

 地面には霜柱が立ち、葉や草は白い霜が降りている。

 午後に出発した僕達だったのだけど、どうやら異世界――アイノカルアの朝にやってきたようだ。


 めっちゃ寒いよ~! 凍え死にそうだ......いくらなんでもあんまりだよ。ベラクア様! 僕等を殺す気なの!?


 それがアイノカルアにやってきた僕の第一印象であり、こんなところに転移させたベラクアへの苦情だった。


「愛菜、大丈夫か?」


「は、はい。なんとか......冬用の衣服で出発したお陰で助かりました」


 僕の左腕に己が右腕を絡めて歩く愛菜を気遣うと、彼女は白い息を吐き出しつつ、手袋の中から小さな使い捨てカイロを取り出してみせた。


 そう、運が良いのか悪いのか、僕等が出発した日本が冬に近かったこともあり、防寒装備で出発したのが功を奏していた。

 ただ、精霊と融合した氷華や一凛の二人は、別の意味で熱くなっている。


「誰の許可をもらって腕を組んでるのよ! 青少年保護条例違反よ! はやく離れなさい」


「ちょっと近づき過ぎだろ! 健全な青少年の距離じゃないぞ。もっと離れろよな」


 僕の上着の左右にあるポケットに潜り込んでいる氷華と一凛が、怒りで体温を上げているのだ。


 ん~、なんか、天然カイロみたいで温かいんだけど、うるさいのが難点だよね......


 真冬の森と表現するのも吝かでない寒さの中を歩きながら、ポケットの中で暖を取っている二人に感謝しつつも呆れてしまう。


 因みに、羽付き精霊といっても、別に裸ではなく二人とも服を身に着けている。

 その衣装というのが、これまた妖精というよりも、美少女戦士風なのがとても痛々しい。

 もしかしたら、彼女達は嫌がっている素振りはしているものの、美少女戦士衣装を気に入っているのかもしれない。


 それはさておき、賑やかな氷華と一凛を他所に、木々の枝や背の高い草を掻き分けながら、霜柱が立つ大地を踏みしめる。

 既に、この世界に来てから一時間くらいは経っているのだけど、そのうちの多くは氷華と一凛による苦言で消費されていた。

 それが何かと説明する必要もないだろう。そう、愛菜が強引に付いてきたのが気に入らないのだ。

 ただ、それに付き合っていると凍え死にそうなので、僕が彼女達の言葉を遮って移動を始めたのだけど、いくら進んでも人里らしきものは見当たらない。というか、延々と言わんばかりに、どこまでも森が続いている。


「そんなこと言ってる場合じゃないよ。早く人里に出ないと、凍え死んじゃうよ」


 少しばかり二人をうるさく感じた僕は、定期的に危機感を煽るのだけど、その効果の寿命は蝉にも劣るほどに短命だ。というか、いまや全く効果がないと言えるかもしれない。


「チマチマ歩いてないで、空を飛んで行けばいいじゃない」


「いっそ、周囲を燃やすとか!?」


 僕の主張に、氷華と一凛が反論してくる。


 そういえば、彼女達は僕のマナが枯渇してるのを知らないのか......てか、燃やしてもいいのかな? 君等、精霊と融合したんだよね? 自然破壊を促進してどうするのさ。


 彼女達が現在における僕の状態を知らないことに思い至ったのだけど、それよりも一凛の発言に肩を竦めてしまった。

 ただ、今後のこともあるので、僕の状態を話しておくことにする。


「ああ、言い忘れてたけど、僕もマナ枯渇が起きてて、前みたいに魔法をガンガンぶちかませないんだ」


「えっ!? そうなの? 魔法が使えない黒鵜君なんて、ただのオタクじゃない。異世界なんかに来ても大丈夫なの!?」


「おいおい、それって拙いだろ! 魔法のない黒鵜なんて、精肉された飛竜みたいなもんじゃね~か」


 オタク......精肉済みの飛竜......それって、美味しく頂かれるってこと? 君等が僕のことをどう考えているかよくわかったよ......


 二人の心無い言葉で、少しばかり虫の居所が悪くった僕は、わざとあてつけがましい愚痴を零す。


「それにしても、聖樹の場所が分からないんじゃ、お手上げだよ。二人がベラクア様から聖樹の場所を聞いているのもだとばかり思ってたのに」


「だ、だって......リリは地球生まれだし」


「うぐっ......ララは能天気だし......」


 そう、リリとララは地球で生まれた小精霊とのことで、実をいうとこの世界のことを何も知らないのだ。

 だから、一緒に来てくれるのは心強いけど、なんの役にも立たない存在ということになる。


「あっ! 黒鵜さん」


 命尽きた花のようにしおれる二人を見て満足していると、腕を組んでいる愛菜が声をあげた。


「どうしたの?」


「あっちの方向に村があります」


 彼女は凍えるような寒さの中を歩きながらも、遠見の魔法で人里を探していたのだろう。手袋を填めた右手を上げ、人里があるという方向を指し示す。

 こういったところが、氷華や一凛と違って、愛菜がしっかりしている点であり、このメンバの中で一番年下なのに、本当に頼りになる女の子なのだ。


「人里の様子はどう? さすがにないと思うけど、盗賊の村とかだったら最悪だからね」


「ん~、あまり人は出歩いてませんけど、普通の村みたいです。あっ......角が生えてますけど......」


「角? もしかして鬼とか?」


「分かりません。でも、みんな額から小さな角が生えてます」


 角か......行くのは拙いのかな......いや、でも、何の情報もないし......実物を見てから判断でもいいよね。


 色々と思案した結果、里の近くまで行って様子を見るのが得策だと考える。


「ちょっと不安だけど、この世界の情報も欲しいし、取り敢えず行ってみようか」


「はい!」


 自分が役に立ったのが嬉しいのか、愛菜は嬉しそうに微笑みながら頷く。


 うん。この子は本当にいい子だよね。氷華と一凛もこのくらい素直だったらいいのに......いてっ! いてて!


「ちょっ! ちょ~! ポケットの中で暴れないでよ」


「ふんっ!」


「おらおらおら!」


 僕が愛菜を見詰めていたのが気に入らなかったのか、氷華はポケットの中で蹴りを立て続けに繰り出し、一凛は正拳突きを連打している。

 窘めてはみたのだけど全く止める気配がないので、僕は彼女達の行動を無視して、痛みを堪えながら人里へと向かったのだった。









 人里――その村は集落と呼ぶに相応しい規模であり、家屋が四十軒ほど集まったものだった。

 その雰囲気は、日本における田舎の村という感じではなく、童話に出てきそうな漆喰で表面を白く塗り固められた平屋の家々だった。


「なんか、おしゃれな感じですね」


「確かに、日本にはこういう村の雰囲気ってないわよね」


「てか、腹減ったぞ」


 やや離れたところから村の様子を観察しているのだけど、愛菜と氷華の二人が村の感想を述べ、一凛はお腹の状況を口にした。

 一凛の発言は、当然ながら論外なのだけど、僕の疑問を掻き立てることに成功した。


「ねえ、精霊ってご飯を食べるの?」


 そう、飽く迄も僕の勝手な想像だけど、精霊がご飯を食べるということに違和感を抱いてしまうのだ。

 というのも、精霊といえば、万物の素なので食事なんて必要ないイメージだからだ。


「食べないわよ?」


「食べるに決まってるだろ」


「ちょ、ちょ~! どっちなのさ!」


 肩を竦める氷華の返事とやや腹立たしげな一凛の返答が食い違う。

 どちらも精霊として同じはずなので、答えが違うのは何かが間違っているに違いない。


「まあ、食べなくても問題ないけど、食べようと思えば食べられるということかしら」


「何を言ってんだ、氷華! ちゃんとお腹が空いてるぞ!」


「はぁ......それが気の所為じゃなければ、病気よね......」


 氷華がウンザリした様子で溜息を吐いているところを見ると、どうやらただ単に一凛が異常なだけのようだ。


 まあ、一凛は何になっても一凛ということか......まあ、それはいいとして、この後をどうするかだね。


 胃袋の塊のような一凛に納得したのは良いのだけど、いつまでもここで眺めている訳にもいかないと考える。

 ただ、時折、行き交う人を見て、少しばかり悩んでしまう。


「それにしても、本当に角があるし......」


「肌の色と髪の色が少し違うけど、角以外は私達とあまり違いはないようね」


「というか、異世界なんだから、それくらい当たり前なんじゃないのか?」


「大丈夫? お腹が空きすぎておかしくなってない?」


「今日は豹が降るかもね」


「なんだと!」


 僕が容姿の違いについて口にすると、氷華が自分の感想を述べ、一凛がここが異世界であることを強調した。

 珍しく真面な意見を口にしたに、僕と氷華は慄きを隠せない。勿論、その気持ちを口にして一凛の怒りを買う。

 しかし、素直な愛菜は純粋に一凛の言葉を尊重した。


「確かに、一凛さんの意見が尤もかもしれませんね」


「なっ! だろ!? さすが、愛菜は一味違うよな」


 頷く愛菜の言葉が嬉しかったのか、一凛が一気に上機嫌となるのだけど、氷華は冷やかな視線を向けていた。


 でも、まあ、その通りなんだけど、だからこそ怖いんだよね......


 マナの枯渇問題を抱えている僕としては、あまりリスクのある行動には出たくないのだ。

 なにしろ、以前の魔法がバブル時期だとしたら、現在は見事に崩壊していて、シャボン玉にも満たない魔法しか使えないのだ。


「心配すんなよ。いざとなったら、うちが何とかしてやるさ。さっさと行こうぜ」


 僕の心中を推し量ったのか、一凛が強気の発言をしてくるのだけど、彼女の意見を鵜呑みにすると、きっと大変なことになるのだ。

 それを理解してる僕は、チラリと氷華に視線をやる。

 すると、彼女も一凛と同じ意見なのか、将又、このままじゃ埒が明かないと踏ん切りをつけたのか、難しい表情のままゆっくりと頷いた。


「分かったよ。じゃ、行くからね。何かあったら直ぐに逃げるよ」


「了解しました」


 僕の言葉を聞いた愛菜が、軍隊っぽい敬礼をするのだけど、様になっていないというよりも、とても可愛い感じがする。

 恐らくは、美静に教えてもらったのだろうけど、雰囲気的には秋葉原辺りに居たメイドみたいな感じた。


 愛菜が可愛らしいのはさて置き、僕等は木々の後から出ると、ゆっくりと集落へと歩み寄る。

 時間的に朝食時なのか、集落へ近づくと食事の匂いが鼻を擽る。


「うお~~、腹減った~~」


「確かに、私もお腹が空いてきたかもしれません」


「そうだね。完全に時差ボケだけど、本来なら夕食の時間食らいだよね。でも、ここで引き返すのも面倒だから、もう少しだけ待ってね」


「はい。大丈夫です」


 一凛と愛菜が食事の匂いに当てられて空腹を感じているのだろう。

 まあ、僕自身がそう感じているのだから、食欲魔神の一凛が耐えられるはずもないか......


 集落で情報収集を済ませ、さっさとご飯にしようと考えたのだけど、世の中とは本当に儘ならないものだと思い知る。


「じ、じ、じ、じじじじじ、人族よ!」


「きゃーーーーー! 人族だわ」


「ま、ママーーーー!」


「みんな、逃げろ! 人族だぞ!」


「こんな北の田舎にまで......なんて最悪な奴等だ!」


 一人の女性が僕達の姿を見つけた途端、持っていた薪らしきものを地面に落とし、どこまでも轟くような悲鳴を上げて逃げ出した。

 その声で、他の者達も僕等の存在に気付いたのだろう。恐怖に顔を引き攣らせ、誰もが脱兎の如く逃げ出す。

 窓から僕等の存在を確かめた村人は、慌てて天戸のような扉を閉め、家の中に引き篭もってしまう。


「どういうことなのかな?」


「黒鵜君と愛菜を見て、人族だって言ってたわ。そうなると、あの人達は人族ではないということね」


 僕が首を傾げると、ポケットの中に居る氷華が観察の結果を口にした。


「そうですね。それに、人族をとても恐れているみたいですし、さっさと出て行った方が得策かもしれませんね」


「そうなると、この世界の人族ってよっぽど野蛮なんだな。凄い怯えようだったぞ」


 氷華に続き、愛菜と一凛があっという間に姿を消した村人達の印象を述べる。


 ん~、愛菜の言う通り、さっさとここから立ち去った方がいいのかも。


 まるで無人の村であるかのように、誰一人として外に居ない光景を目にして、この村から出ていく判断する。

 ただ、この判断は少しばかり遅かったようだ。


「あっ! あ、あれは......」


「ど、どうしたの?」


 突如として声をあげた愛菜に問い掛ける。

 すると、彼女はその可愛らしい顔を思いっきり引き攣らせ、その理由を口にした。


「ひ、飛竜が大群で押し寄せてきます」


「な、なんだって! に、逃げるよ!」


 愛菜の言葉を聞いた僕は、即座に撤退することにした。

 なにしろ、今の僕では飛竜一匹でも手に余るのだ。


「はぁ!? なんで逃げる......あっ、そうか、美味しく頂かれるんだったな」


「これも、散々と食料にした報いかしら。いえ、それよりも早く逃げないと......」


 直ぐに逃げる判断を下した僕に呆れる一凛だったのだけど、どうやらその理由を思い出したみたいだ。

 氷華に関しては、因果応報だと零していたのだけど、直ぐに賛同の声をあげた。

 しかし、僕はそこで二人の様子に少しばかり引っ掛かりを覚える。


「あのさ、いざとなったら氷華と一凛が、何とかしてくれるんじゃなかったっけ?」


 愛菜の手を握って逃げ出しつつも、僕はポケットの中に納まる二人に問いかける。


「そ、それは......」


「い、いや、今日はちょっと調子が悪くてな......」


 どうやら、彼女達の発言は、僕を焚き付けるための方便だったようだ。


 なんかおかしいと思ったんだよね......てか、そうなると、いよいよ二人は使い者にならないということか......いや、とにかく、ここは何とか逃げ出すしかない。


 冷たい眼差しを二人に向けながらも、僕は愛菜の手を引いて必死に逃げる。

 しかし、今度は愛菜が申し訳なさそうに口を開いた。


「ご、ごめんなさい。村人に気を取られていて......気付くのが遅れました......」


 そう、遠見の能力を持つ愛菜だけど、一度に目にすることのできる範囲は一か所だけなのだ。

 だから、村人の様子を見ている時は、遠くの情報を得ることができず、逆に、遠くを見ている時は、近くの光景を見ることができないのだ。


 マジか......でも、それは仕方ないよね......というか、飛竜はどこまで来てるんだ?


 申し訳なさそうにする愛菜を他所に、慌てて空を確かめようとした時だった。


「グギャ――――!」


 頭上から飛竜の鳴き声が聞こえてきたかと思うと、空を飛ぶ飛竜の巨体が陽の光を遮ったことで、自分の居る場所が日陰になったのを感じた。


「ま、マジ? 真上?」


「あぅ......」


「以前なら、楽勝だったのに......」


「くそっ、ほんとなら唯の食料だったはずだったのに......」


 僕が悲痛な声をあげると、愛菜が愕然とし、氷華と一凛が愚痴を零す。


 次の瞬間、僕等に追いついた飛竜が周囲を取り囲むように旋回すると、次の瞬間には猛スピードで急降下してくる。


「くそっ! 仕方ない」


 これ以上は逃げられないと感じて、僕は脚を止めて愛菜を背中に庇うと、左の腰に差してあった日本刀を右手で引き抜く。すると、刀を抜く独特の音が響き渡り、研ぎ澄まされた刀身が光を浴びて輝く。


「愛菜、魔法はどれくらい覚えた?」


「再生魔法はみつるさんから太鼓判を頂きました。あと地属性魔法を少し......」


「じゃ、背後から回り込まれないように、地壁を後ろに展開できる?」


「はい。やってみます」


 刀を右手で構えた僕は、愛菜に指示を送ると、左手を急降下してくる飛竜に向ける。


 足止めくらいにはなってくれよ!


 神に祈るような気持ちで、爆裂の魔法を放とうとした時だった。

 僕の行動を警戒したのか、急降下していた飛竜が速度を落として軌道を変えた。


「ちっ! 勘のいい奴! だけど、こっちもタダではやられないぞ」


 愚痴を零しながらも、透かさず狙いを定め直して魔法を放とうとした途端、腹部に激痛が走る。


「ちょ、ちょっと、まって!」


 そう、氷華がポケットの中で僕のお腹を思いっきり蹴飛ばしたのだ。


「ちょ、ちょっと、蹴ることないじゃん。てか、なんで止めるんだよ」


「飛竜に人が乗ってるわよ」


 突然の暴行に苛立った僕が、苦痛で顔を歪ませつつ苦言を述べたのだけど、彼女は気にした様子もなく一匹の飛竜に向けて指を差した。


「えっ!? ほんとだ」


「ほんとですね。人が乗る鞍を背負ってます......またまた失敗です......」


 僕はそこで初めて飛竜を操る存在に気付く。

 遠見の力でそこまで確認できなかったのが悔やまれたのか、愛菜が少しバツの悪そうな面持ちで項垂れる。

 しかし、氷華は落ち込む彼女を慰めることなく、己が疑問を口にする。


「あれを飼いならしてるのかしら?」


「いやいや、飼いならしたら食べ辛いだろ!?」


 もう、一凛は放っておこう。どうせ食べ物のことしか頭にないんだ......


 本来であれば、飛竜に人間が乗っていようと、この状況は油断できる場面ではないのだけど、飛竜に乗っている者が両腕を広げてバンザイをしているのだ。間違いなく戦闘意志がないことを伝えているのだろう。

 なにしろ、相手の数は三十を超えていて、思いっきり多勢に無勢の状況だなのだ。戦う気があれば、僕等を油断させる必要性なんて無いはずだ。

 ただ、飛竜に乗った者達が、どんな目的を持って僕等を取り囲んでいるのかが分からない。

 村人の様子からすれば、絶対に良い展開ではないような気がする。


「戦う意思はないみたいだけど、どういうつもりなのかな?」


「さあ、でも敵意は感じないし、この状況で戦っても勝ち目がないでしょ?」


「まあ、今の僕の力じゃ、簡単にやられるだろうね」


 氷華と相手の思惑について話している間に、飛竜は僕等を取り囲むように地に降りた。

 すると、正面に着地した飛竜の背から、革の鎧らしきものを纏った者が飛び降り、僕等の前につかつかと機敏な動きでやってくる。


「えっ!? 女の人?」


「竜戦士ってところかしら」


「てか、乳がデケ~。あれは敵だ」


「かっこいいです」


 飛竜から降り立った者が、女性であることに気付いて驚きを露にすると、氷華、一凛、愛菜の三人が思い思いの感想を述べる。

 というか、一凛だけは敵視しているようだ。

 しかし、その女性は一凛の存在に気付いていないのか、僕に真剣な表情を向けると、すぐさま恭しく頭を下げる。そして、ゆっくりと僕に話し掛けてきたのだった。


「お迎えにあがりました。竜神様」

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