ブラッド・マキナ
くるす
プロローグ
都市の上空は厚い雲に覆われており、月の光さえ届かない。大通りならば街灯や看板の灯で昼間のように苦もなく物を見ることができる。
「はっ……あぁっ……」
しかし路地裏にその光は届かない。ただのコンクリートの壁に挟まれた僅か1m程の幅の空間にそんな光は必要ない、とでも言いたいのか、窓すら無く、使われているのかどうか定かではない裏口のドアは施錠済み。
「っと、こいつで終いか」
そんな誰も寄り付かない路地裏に2人。1人は黒い少年。黒い髪に黒い、現代には似つかわしくない外套。黒いブーツは地面の赤い液体で汚れている。もう1人は赤い、とにかく赤い男。だが、この赤さは服飾や髪の色では無い。
「む、刃物で滅多刺しにされた遺体、と言ったところか。これなら怪しまれる事なく検死を乗り越えそうだな」
血塗れで死に体の男を足蹴に、少年は続ける。
「『幻種』の違法取引とは、人類にゃ相手されねえだろうに。一体全体誰相手に取引してるんだ……って、もう死んだか」
息せぬ躰に用はないと、踵を返し路地の更に奥へと歩を進める。
「
突如聞こえた声に少年、式吹が足を止める。いたのは上等なスーツに身を包んだ銀髪の青年。
「どうした犬。仕事ならもう終わったぞ」
「見れば分かります。それと私の名前は犬ではなく」
「
「あぁ、安心しました。てっきり私の名前さえ覚えられない程まで脳細胞が死滅したのかと」
朧が死体に目を向ける。一般人なら直視に耐えないほど惨い死に様だが、彼は慣れていたため日常的に目にするものを見ているような目でそれを見た。
「帰るぞ朧。こいつは末端だ。大した情報も持っていなかった」
「分かりました。貴方が末端として使い捨てられるような下級に力を使う程手こずった事が」
2人は路地の奥へと消えていく。数時間後、路地裏の死体を偶然見つけた一般人によって通報。朝のニュースには『通り魔による殺害』として報道された。
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