ホワイト・アウト
よしたつ
序章
知らないうちに、幕は開いていたらしい。
私という一人の物語は、私を置き去りにして上演されていた。
気付いた時には時すでに遅く、手遅れも手遅れ、先送りにも出来なかった。
先に立たない後悔だけが私の心に溜まっていた。
後に立って支えてくれる友達もいない。
頭の中は真っ白で、実はあったのかもしれない台本を、私は綺麗さっぱり忘れていた。
台本通りに演じていられれば、もしかしたら。
もしかしたら、私の物語はほんのちょっとだけ違うお話になっていたかもしれない。
それは例えば、一人もいなかった友達が、一人できていたりだとか。
きっと、それくらいの小さな違いなんだろうけど。
それでも私は、救われていたのだろう。
私はどうしようもなく、下手くそな役者だったから。
悲劇のヒロインにも、世界を救う主人公にもなれなかった。
それが悲しいわけじゃない。
それが悔しいわけじゃない。
それは、この物語における正しいドラマツルギー。
私にはどうすることも出来ないのだ。
だから。
だからこそ。
最後くらいは。
最期くらいは。
私の好きに振る舞ってやろう。
勝手に開かれていた幕は、私の手で引きずり降ろしてやる。
さあ。
物語の終幕だ。
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