第4話 真夏は僕の間違いで
さっきまで闇に覆われていたはずなのに、ここら一体はある程度物の形が分かるくらい妙に薄っすらと明るかった。
目の前には大きく拓いた土地。その中心には、天近くまで枝を伸ばしている大木が一本居座っている。
背だけではなく、太さも樹齢何千年の歴史を一目見ただけで感じさせるような立派な木だ。
御神木なのかな。そう思わせるほど神々しく、歩き疲れていたはずの足は僕の意思とは無関係に勝手にその木に向かって歩み寄ろうとしていた。
「すごい…。こんな木があるなんて今まで知りませんでした…。」
「そうなのよねー。周りに何にもなくてこんなに大きいのに遠くからじゃ全然この木見えないの。」
彼女は大層不思議そうに首をかしげた。
「まぁとりあえず家に入りましょ。おじいちゃんが待ってるわ。」
あまりに木に夢中になっていた僕は、再び歩きだした彼女の先にある、灯りがついた小さな一軒家にようやく気がついた。
あれが本村さんの…。
恐る恐る彼女についていくと、家の前に人影が一つ。椅子に座っていたその影は、おもむろに立ち上がり声を発した。
「京子~!遅かったじゃないか!」
「ごめんおじいちゃん!この人が遅いもんで時間かかっちゃったよ。」
家の灯りに目が順応してきた頃、この人呼ばわりされた僕は目の前に立っている可愛いご老人が彼女のおじいちゃんであることがわかった。
丸顔で小さな鼻、顔と比べてちょっと大きな耳。おまけに猫のように大きな瞳。
身長と性別さえ違うものの、あとはどこをとっても彼女そっくりだ。
彼女の可愛いはおじいちゃん譲りだったのか。なんか納得してしまう。
「君が太一君だね?」
彼女とおじいちゃんを見比べ過ぎてしまい、自己紹介が遅れてしまった。
「遅れてしまい申し訳ございません!三森高校二年生の八木沼太一です!本村さんとは今日からお付き合いさせてもらってます!」
僕の言った言葉に彼女は驚いたのか、元々大きな目をいつも以上に見開いて怒鳴った。
「何言ってんの!付き合ってないわよ!」
あれ?どうやら僕はとてつもない勘違いをしてしまったらしい。
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