第20話 不発。ゴットフィンガー
「ちょっと、生田君! あなた何見てるの!」
そう言って俺に人差し指を突き出したのはクラス委員の山本 唯さんである。どうやら彼女は俺が風が止んだのに今だカーテンの向こうでしゃがみ込んでいる渡辺先生の丸出しのパンツを見ていることに不満があるらしい。
「なんだよ、委員長」
俺が素気無い態度で答える。しかし彼女は、なぜだか少しうれしそうに「なによ委員長て、人を役職で呼ばないでよね」と言い返してきた。なんだこの女? 吊り目の癖してМなのか?
「って、そんなことよりあなた渡辺先生のお尻ばかり見て! ハレンチでしょ!」
山本さんは緩んだ顔をキリッと戻すと甲高い声で叫ぶ。うるせえなぁ、このヒステリック女。なんで俺が尻見てるだけで文句いわれにゃならんのか。
「うるせえなぁ、見てねえよ! たまたま俺の向いてる方向に丸出しのケツがあるだけだろうが」
「しっかり見てるじゃない! これだから男は、平然と嘘をついて言い逃れようとして」
俺の精一杯の言い訳に山本さんはケチをつける。
「仕方ねえだろうが! 目の前に女のケツがあるんだからよ! どんな人間でもケツがあったら見ちまうだろうが」
「見るわけないでしょお尻なんて! あなたが変態なだけよ」
山本さんは吊り上がった目元を細目「あーいやだいやだ」と呟く。スタイルもよく、美人の山本さんに”変態”と言われるとなぜだろう。小うるさいと思っていた彼女がすごく愛おしいと思えてきた。
今思えば俺が小学生の時にスカート捲りをしていたが、春香のスカートを捲ると目を細め軽蔑したような眼差しを送って来てくれていた。あそこから俺は春香に対して恋をしていたのかもしれない。
俺が急に物思いに深けていたのを勘違いしたのか山本さんは「何よ……ジロジロ見て。怒った?」となぜだか申し訳なさそうにする。
(どうした? いきなりしおらしくなって? しょうがない。景気付け一発揉むか)
そう思い。腕を”ヌッ”と山本さんの方へと伸ばすと隣にいた春香に腕を掴まれる。
「ちょっと夏樹? 何しようとしているの?」
そう言って彼女は掴んだ腕に力を籠める。(違うんだ春香! これは出来心で!!)
「いや別に……山本さんの襟に何かついてるからさ……」
俺は内心の焦りを理性で綺麗に相殺して上手い弁明を述べる。
「えっ、別に付いてないけど?」
山本さんが俺の言葉に反応して襟を確認し率直に答える。
「ははは、どこか飛んでっちゃたかなぁー?」
俺が苦し紛れにそう答えて「あはは」と笑って流そうとするも春香は手を離そうとしない。他の二人も俺の挙動と言動を不審に思ったのか目を細める。メスゴリラ、ぶっさ!? お前目細めたらめっちゃブサイク!
「シャーッ」
そこにちょうどよく、身だしなみの整えた渡辺先生がカーテンを開けた。
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