オレンジ色のブーケについて

 恵からの腹立たしい連絡の二日後。景は友達の結婚式に参加していた。

 あれから惠と連絡を取っていない。翌日に夕飯を作りに来てほしいような連絡が来ていたが、それも景は無視していた。

「はあ」

 思い出してため息をつく。隣の席の友達が怪訝そうな顔をしたのでなんでもないとジェスチャーして誤魔化して花嫁の方へ顔を向ける。友達である花嫁はとてもきれいだった。元から可愛い子が、化粧と幸せでより一層輝いている。

 羨ましいことこの上ない。周りの友達も皆、花嫁をべた褒めしていて、ますます心がささくれる景だ。

「そうしたの景」

「え? どうもしないよ。羨ましいなって」

「景のところも付き合い長いじゃん。結婚しないの?」

「……どうだろうね」

 正直、景にもよくわからなくなっていた。このまま惠と結婚して良いものか。それで自分は幸せになれるのか。たった今目の前できらきらしている花嫁のように?

「難しい顔してる」

「うん。難しいや」

 景が苦笑しているとブーケトスを行うとのアナウンスが入った。何人かの友達と花嫁の周りに集まる。花嫁は満面の笑みでオレンジ色のブーケを投げた。

 それは、しゅるしゅるとカーブを描いて景の手元へとやってくる。まるで景だけを目指していたかのように。

「景、やったじゃん!」

 友達がみんなはしゃいでいる。先程まで話していた友達だけがわずかに微妙な顔をしていた。


 せっかくブーケをもらって気分が良いので景は恵に連絡を取った。

 友達の結婚式に参加していたこと、ブーケトスでブーケをもらったこと、そして。

『ブーケもらえたし、わたしもそろそろかな?』

 それに対して恵からの返事は辛辣なものだった。

『お前、今から男探すの?』

 危うくブーケを床に叩きつけるところだったが、ブーケに罪はない。景は深呼吸したが返信の言葉は見つからなかった。

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