この物語は、心の底から酷く共感してしまった物語を、眠ったまま朗読し続けてしまう「聖譚病」という病を、その物語になぞられた『贋作』を綴り、読み聞かせる事によって患者を呼び起こす、一人の「綴者」の先生のお話です。
この、文月八尋という先生が綴られる『贋作』は、どれもこれも患者に寄り添った暖かさのこもった優しいものばかり。
他の人から見れば、彼が綴った物語は確かに贋作。けれど、患者にとっては、自分の希望になりえるお話。
私は、作品で文月先生が語られていた、綴者と『贋作』に対する想いに胸を打たれました。不器用だけれど、誰よりも綴者である事を誇りに思い、熱い想いを抱き続けている……そんな先生が、私には眩しく見えました。
誰よりも純文学を愛している文月先生だからこそ書ける『贋作』。どうぞ、皆様もその暖かくて優しい物語を読んでくださいませ。
美しく読みやすい文章、魅力的なキャラクター、奇抜な設定。面白い作品にそれらが揃っているのは当たり前です。勿論、本作にはそれらが全て含まれていました。
冒頭を読んで
「あ、コレ絶対面白い」
そう思える小説、漫画、アニメ。そういった作品に誰もが一度は出会ったことがあるでしょう。そんな感情を想起させるのが本作でした。
小説が好きな作者様だからこそ描ける世界観には感嘆を漏らすばかり。
主人公の文月が、どう物語を綴っていくのか。果たしてそれは〝贋作〟と呼ぶに相応しいのか。
本作を手に取ってから〝名作〟に興味を示すもよし。新しい面白さを見出すもよし。それは読者様次第なのでしょう。
いくつもの面白さが織り込まれた〝綺譚〟を、あなたも読んでみませんか?