魔王さんと勇者さん
灰猫
第1話 魔王です。
どうも、初めまして。魔王です。
いまどき魔王ってwww、とお思いになるかもしれませんが、それは仕方ないです。
だってもうかれこれ400年くらい魔王してます。
400年もやっていればマンネリ化もしますし古くもなりますし、逆に一周してトレンドみたいな扱いもされますがやっぱり廃れた存在です。
懐古厨が時々「あ〜、いたよね魔王とか笑。あの頃が1番良かったよね」とか言ってくれる程度です。
もう「あの人はいま!」でも取り上げられなくなった、そんな廃れた職業です。
誰が飽きたって自分が1番飽きました。
400年もやってたら殺戮も虐殺も略奪もし尽くしてしまったもので、もう最近はガーデニングとかに手を染めています。
あと村人と混じってメインストリートの清掃とか街路樹の水やりなんかも手伝っています。
比較的温厚な性格になったなぁって自分でも思います。
ですがたまに、ごくたま〜に怖い存在にもなりますよ。
だって魔王ですから。
つい130年前くらいにも村長さんがやって来て
「うちの村、過疎化が激しいのでちょっと襲ってもらえませんかねぇ?魔王退治の勇者とか呼び込んで町おこししたいんですよ」
と頼まれたので、部下4人引き連れて深夜に花壇荒らしたり壁にスプレーで『魔王降臨』とか書いて回ったんです。
もちろん村長には話通してますからね?
そしたらもう翌朝大騒ぎでね笑。
一緒に行った部下なんて村人から「四天王」呼ばわりですよ笑。
めっちゃ喜んでましたよ、その4人。
「あざ〜す。あざ〜っす」言ってました。
で、その村も賑わいを見せてしばらくした頃に勇者がパーティ組んで来たんですよ、私のところに。
けど私もう200年くらい平和に生活してたんで育ってないんですよ、勇者。
もうね、なんにもできないの。
剣術も並以下だし魔法も手品レベルだし、僧侶だけ頑張って回復魔法使うんだけどすぐMPなくなるの。
なんか可哀想になって私のMP少し分けてあげたりしてね。
いくら平和ボケしてるっていっても私も一応400年魔王してるわけだからさ、強いんですよ、結構。
だからもうね、全然痛くないの。
一応は戦闘の演出的に途中で中ボスとか呼ぶんだけど、中ボスさんだってそこそこ強いわけですよ。
「魔王さん、あれなに?倒しちゃってもいいの?」
って超必殺技くらいながら平気な顔して私に聞いてくるんですよ。
「ごめんね、ちょっとだけ痛がってもらったら逃げちゃって構いませんから。あとは私がなんとかするから」
って気遣ったりしてね。
ほら、中間管理職のストレスとかちゃんとケアしないといまのご時世うるさいでしょ?
自殺とかされたらやっぱり私としても落ち込むし過労死とか言われて叩かれるし。
ま、結局そのパーティは途中で『にげる』選択してその後2度と来なかったけどね。
それが最後の戦闘かな?
このまま寿命尽きるまでのんびりしたいな〜って思ってたんですよ。
昨日までは。
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