ビートをお持ちしましたお嬢様
ミソスープ
知らないなら聞かせてあげる
朝から頭の近くで太鼓を叩かれているような振動が部屋に響く。
重いまぶたを無理やり開かせ時計を見てみる。
まだ朝の6時じゃないか。
お嬢様はまた朝から一発バースを蹴っているのか、なんて懲りないんだ。
今日こそ一発叱ってあげなければ。
寝起きで千鳥足のまま、爆音が鳴り響くお嬢様の部屋に進む。
「イェーイ!!まだまだ蹴り足りないバース、黙ることなんてほぼ皆無、あら、ちょうどよく入ってきたこの執事は私の飼い犬」
「所詮親の財力で何言ってるんですか、七光り、黙ることができないなら顔に書いとけ注意書き、だがしかし少しお黙りなさい人間公害、飼い犬とか言われて人権侵害、お嬢様もう朝はこの辺にして音楽を」
「くぅ」
「お嬢様?」
「あんた執事のくせに私のことボロクソに言い過ぎよ!!ゴミ!!ゴミ!!」
「まぁ気分良い時に入って僕に流しちゃうからいけなかった。あとは朝だから少し機嫌は悪いです」
横で顔をタコのように赤く膨らんでいるのを横目にスピーカーの切る。
全く、お嬢様は少し棘のある言葉を吐かれるとすぐに調子を落とす。
もう少しメンタルが強ければいいんですけどね。
「あんたが入ってきたから興が醒めたわ」
「ええ、それぐらいがいいです。まだ朝の6時なのですから。いくらお嬢様が学生で土日の休日を過ごしていても、こちらは一日中どこかのケツの青い方の尻を吹いたり他の業務をこなさなければいけないんで」
「平気でよくものを言えるわね、私とあんたの立場わかってるの?」
「もちろんです。執事とお嬢様、ですよね?」
「よく分かってるわね。じゃあさっさと朝食の準備をしなさい」
「まだコックは寝ていますが」
「あんたが作るんだよ!!」
「かしこまりました、お嬢様」
人使いが荒いなぁ。
とりあえず冷蔵庫に何があるかもわからないから、キッチンに行ってから考えよう。
料理、できない。
そもそも執事の求人を見て給料も良かったから来てみただけだけど、人がすぐ辞めていなくなるからっていう適当すぎる理由で採用っていうのもなんだか不安。
得意なことも特にないし、特徴が無いというかなんというか、真っ白なノートというか。
でも、まさかお嬢様がただの七光りMC気取りの少女とは思っていなかったからなぁ。
お嬢様、学校で友達とかいるのかな、虐められてないかな。
お嬢様が話している姿なんて家にいる時だけだから外ではどう振る舞っているのか。
将来が楽しみですねお嬢様。
さて、とりあえず料理なんて作れないからって、おお、これは。
米もあるし、これはいけそうだ。
うん、うん、簡単で且つ美味しい。
いくらでも食べれて手軽に作れる。
完成だ!!
熱いうちにお嬢様に食べさせよう!!
「で、なんだこれ」
「知らないんですか?ねこまんまです」
「いや知ってるけどこれ」
「手軽に作れて食べれて二つを一つにして美味しい究極の料理ですよ」
「お前...さすがに...」
「食べないんですか?じゃあ僕が頂きますね」
「そういう問題じゃないだろ!!」
「味噌汁のことですか?いやはや、味噌汁なんて作り方わからないんでインスタントですけど、これもまた美味しいんですよ」
「なんでこんな執事を雇ってしまったのだ...」
「なんてこんな美味しいものを食べて貰えないのか...」
「はぁ...」
しょうがない、少しお嬢様に付き合ってあげよう。
ポケットにあるスマートフォンを取り出し曲を流す。
お嬢様もそれに反応したが、なんというアホヅラ、もはや芸術です。
「うんうん、美味しいこれは病みつき、振られたお嬢様からの無茶振り、食べながらはきついですね息継ぎ、でもこれは本当に美味しいですよお墨付き、がっつきたくなるぐらい美味しい、僕は大好き、けど見せない一瞬の隙」
「珍しいわね先行してくるなんて、今日バースかますわこれであなたに2本目、でも食べながらなんて行儀が悪い、一体どんなところでしつけを受けたのかしら、ジャングル森林育ち、かわいそう残念そうに、さきから美味しいの一点張りばっかり、力をつけなさいよ全面的に」
満足と言わんばかりに鼻の穴を大きくしているお嬢様には悪いが、ここで曲を止めさせてもらおう。
止めた瞬間、お嬢様は少し物足りなさそうな表情と裏腹、寂しさを感じる。
「さすがお嬢様でした。僕の心もズタズタです。お見事ですね」
「何、もう終わりなの?私はもっと続けてもいいぞ...?」
「いえ、そうはいけません。もうみなさん業務の時間なので」
「ふーん、まぁ許してあげよう。あと」
「あと?」
「夜は空いているのか...?」
「夜なら空いていますよ」
「じゃあ夜だ!!夜に続きをするぞ!!」
「いいでしょうお嬢様、では業務に行ってきます」
「うむ、行ってこい!!」
お嬢様はなんだかんだ言って寂しがり屋なんだなぁ。
でも最近の子ってこんな感じで構って欲しいきとを遠回しでぶん投げて、それを上手く受け取れなかったら怒ってくるなんていう理不尽な認知的問題を抱えているかた難しい。
お嬢様も友達を呼んでラップをすればいいけど、多分友達がいないんだろうな。
これも執事の役目?
いや、友達作りぐらいはできるでしょう。
いつかお嬢様が自宅に友人を招いてサイファーをやることを僕は祈ってますよ。
そう考えながら皿を片付けキッチンへと向かった。
「おい!!!!!結局私の朝食どうなるんだ!!!!!!」
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