04-2
視界に表示された表の確認を終え、慧が気が付いたときに目の前に見えた光へと向かうと先程の格納庫よりもさらに広い場所に今度はGWをすでに身にまとった状態で中央に男女合わせて9人がすでに集まっていた。
「お、最後の人が来たみたいだね」
「みたいだな」
「君ーこっちだよー!」
みんな、顔はバイザーに隠れてわからないが、明るく手を振ってくれる人もいた。
よかった。優しそうな人もいるみたいだ。
それを見て多少なりと安心した慧はその集まりの中に混ざっていく。
「それではまずは自己紹介といきましょうか。順番は先程表示された人の順にするとしましょうか」
リーダー役を務めることとなった宏樹は仕切るように指揮をし、順番に挨拶をさせる。
「ではまずは私から、私の名前は尾形 宏樹。気軽に名前で呼んでもらってかまいません。皆よろしくお願いします。それでは次の方お願いします」
「それじゃ次はボクだね。ボクの名前はアリス。好きな食べものは甘いものでその中でも色んな果物が入ったフルーツパフェが好きかな?みんなよろしくね。それじゃ次の人お願いね」
そう言われた慧は大きく深呼吸をし、緊張しながら話す。
「ぼ、僕の名前は防人……」
「オッス俺様の名は植崎祐悟だ。よろしくな。趣味は筋肉トレーニング。好きなことは身体を鍛える事だ」
「オイコラ待てこら次は僕の番だったろう。何を抜かしてくれてるんだ?というか筋トレと身体を鍛えるってのは多分だが意味は同じだぞ」
「そうだったか?すまねぇな」
「このっ悪気が一切無いってのが分かってるから逆に腹立つ……せっかくの挨拶がお前の大声で掻き消されちゃったじゃないか」
慧は大きなため息を吐いてから深呼吸をし、気持ちを切り替える。
「それじゃあ改めまして、防人慧と言います。えっと好きな食べ物は果物系でりんごが特に好きです。皆さんこれからよろしくお願いします。えっと次の人どうぞ?」
「よし、俺は内宮 陽一だ。趣味はそうだな、映画観賞だな。みな、よろしくな」
「私は前園 理恵。好きな花はカーネーションです。よろしくね」
「あたしは永田 暁よろしくねん。あ、声から判断しないでちょうだいね」
「俺は飛鳥 槍利だ。名前は武器の槍に利益の利と書く。よろしく」
「私は宮沢 桜。特技はフルートです」
「私はヒルダ。好きなことはまぁテレビ観ることかな?よろしくたのむよ」
「よし、これで全員名乗ったな」
皆の挨拶を終え、宏樹が挨拶を終えたことをモニターを操作して学園側に知らせる。
「さて、これから行われる団体戦では皆の連携が必要となるだろうから私の指示の元に動いてもらおうと思うけれど問題ないですか?」
宏樹がそう聞いて、全員が肯定する。
するとブザーが鳴って放送が流れ始め、室内に響く。
『これより第三試験を始めます。今回は皆さんの団結力や判断力が試されます。そして相手にするのは先程戦ったガーディアンの強化版GW≪ガーディアン改≫です。武装は前回と同じものですがステータスが向上されていますので今までのようにいくのだと油断しないようにしてください。それでは頑張ってください!』
◇
最終試験内容
・制限時間一杯まで一人でも多く生き残れ。
制限時間
10分(600秒)
勝利条件
・時間いっぱいまで生き残る。
敗北条件
・チームの全滅。
『OK』
◇
表示されたモニターの確認を終えると慧たちの部屋にある一際大きな扉が大きな音を立てて開かれる。
慧たちは宏樹に続くかたちで次へのステージに足を運ぶ。
「気張っていきますよ!!」
「「「おー!!」」」
扉を抜けた先にあったものは崩壊した街だった。
ガラスが割れて崩れた高層ビルや戦艦ぐらいの大きさのものでも隠れられそうなほどの穴の空いた巨大なドーム、整備されていないであろう道路は凸凹とひび割れてガラスが散乱していた。
みんながこっちに入り終えると開始までの30カウントが始まる。
「さて、廃虚の街は身を隠すのには最適な場所ですね。正直なところ私は指揮をしたことは一度もないので大抵のことは自己判断に任せることになるところも出てくるかもしれませんが、リーダー役として努力させてもらいますのでよろしく頼みます。ではそれより素早く役割分担の説明とでもいきましょう」
宏樹がみんなを円の形に集まるように言い、話を始める。
「装備が狙撃タイプであるアリス、ヒルダは身を潜めつつ狙撃をお願いします」
「了解」「わかったよ」
「重火力タイプの植崎と暁はビルを崩して巻き込むなど多数撃破に心掛けてもらいます」
「おう!」「ええ」
「バランスタイプ、近接タイプは敵を倒しつつも敵の軍勢をふたつのタイプの射程範囲に誘き寄せ、援護してもらいつつ各個撃破に専念してください」
「は、はい」「「わかりました」」
「初めのうちはさっきの指示通りにお願いします。今後なにかしらの変化に順じて指示をしていきたいと思いますので通信にはしっかりと耳を傾けてください。……それではいきましょう!!」
「「「おう!!」」」
みんなの張り上げた声と同時にカウントダウンがゼロになり、試験開始のブザーが鳴り響く。
宏樹はすぐさま敵に見つからないように廃ビルの中に身を潜め、指示に専念できるよう全体の地形図を表示して大きくため息をつく。
表示された仲間のいる場所が見事にバラバラだった。
「動きから見て話を聞いてくれた者もいるようですが、ほとんどがあっちこっち向いて各々で行動をしていますね……」
これでは「全滅します」と大声を張り上げながら無防備で敵の目の前にいるようなもの。
これが現実ならばまず確実に一番孤立している植崎から囲まれてやられてるだろう。
もし個々の能力が高く、全滅することなく戦闘が出来たとしてもチーム戦としての評価は確実に低いだろう。
この戦いでは特にその点は評価されることはないが、先程も言った通り指揮をすることなんてはじめての事だ。
指揮も知識にあることを思い出しながらしなければならないというのに一人一人がちゃんと言うことを聞いてくれないとなるとどうすればいいのか分からなくなってくる。
「だいたい私はどちらかと言えば前線に出て戦闘を行う側の人間というのに……少なくとも私なんかよりもアリスの方がうまくやるでしょうに……どことなく、なんとなくですが彼の悪意じみたものを感じてしまいますね」
だが決まってしまったものは仕方ない。
広樹はそう自分自身に言い聞かせる。
多少反抗的な奴がいたとしてもリーダーの命令なのだと言えば通ってくれる。そう思いたい。
このままでは仕方がないですねと小さく呟き、通信をみなに繋げる。
「皆、聞こえていますか?」
各々の返事を聞き、わずかに頷く。
「よし、では今から指示を送ります。……ヒルダ。あなたは今いるビルの反対側の窓辺へ移動してから視認出来るであろう桜を援護射撃をお願いします」
『了解したよ』
「暁。あなたは現在次の交差点で通過中の大通りを左折しつつ角のビルに向けてミサイル照射」
『わかったわ』
時事通りに動き、破壊され倒れるビルが暁を追う敵機を押し潰す。
「慧。マップ確認して孤立している植崎の援護に向かってくれ」
『またあいつは!……っと了解しました』
「陽一。そこから敵へ攻撃しつつ十字路まで後退を」
「はい」
「理恵。そこからすぐ右の建物に向けてバズーカ発射」
「わかった」
理恵は手に持っていたライフルをバズーカに持ち代えて引き金を引く。
放たれた野太い光線が建物を貫通し、陽一を追っていた団体を吹き飛ばす。
「アリス。そこから西方向、スコープで見える飛鳥を援護射撃」
『了解』
広樹は出来るだけ噛まないように気を付けつつさらに止まらないように地図を凝視しつつ皆に指示を送る。
緊張ゆえか声は震え、データ上あるはずなのに口の中の水分はどんどんと飛んでいき、乾いていっている感覚に襲われる。
こんなことは現実で、いやゲーム内でももう決してしたくはない。
広樹は指示を送り続けることに少々嫌気が差しそれに対して首を強く降って気を張り直す。
「――!?」
地形図を見つめて自分のすぐ側に敵機が迫っていることに気がついた。
広樹はすぐさまライフルによって攻撃をし、撃墜する。
「アラート!?」
地図を確認し、こちらへと近付いてくる一団があることを確認する。
「敵機が仲間への連絡をしたのでしょうか……どうやらリーダー……指揮官を優先的に狙うように行動パターンが設定されているようですね。まだ憶測ですがそうであるのならば囮として戦場を駆けるとしましょう。まずは隠れ場所を移すことが先決ですね」
広樹は大きく開いていた地図を消し、敵のいない方へ飛び出す。
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