第30話「謎の剣士に弟子入り」

 その後マオと別れたタケル達は、マアサが神託で聞いたという場所へと向かっていた。


「てかさ、そこに何があるんだろな?」

 タケルがイーセと歩きながら話している。

「いや、誰か強者がいるのではないか?」

「あ、そうか。じゃあその人に弟子入りしろって事か?」

「そうかもしれんな、ん?」

「どうしたの……何だこの気配?」

 タケルとイーセが眉を顰める。


「……キリカ、これ」

「ええ、そのようね」

 ユイとキリカも気配に気づいた。


「来るぞ!」

 そしてアキナが叫んだ時、地面から大きな黒い影が音を立てて出てきた。


「フフフ。死んでもらうぞ、神剣士達よ」

 その黒い影、妖魔が笑いながら言う。


「どうやらこいつは大物のようだな、桁違いの気を感じるぞ」

 イーセが妖魔を睨みながら言った。


「アキナ! イーセ!」

 タケルの一声で二人は技を放つ。

「ああ、猛虎烈光波!」

「彗星弾!」


 それは妖魔に直撃したものの、全然効かなかった。


「な、なんだって!?」

「ならわたしが……破邪聖光!」

 ユイが破邪の光を放つが、


「フフフ、そのようなもの俺には効かん!」

 妖魔は何事もなかったかのようにそこにいた。


「え、え? あいつって破邪の力が効かないの?」 

 キリカが驚きながら呟くが

「ううん。あいつも強いけど、わたしの力不足もある」

 ユイは首を横に振り、悔しそうに言った。

「なら私と力を合わせて……キャアア!?」

 キリカとユイは黒い気に飛ばされた。


「悪いな。黙って待ってやるほど俺はお人好しではない」

 それは妖魔が放ったものだった。

「てめえ! これでも喰らえー!」

 タケルが妖魔に向けて光竜剣を放ったが


「ふん、無駄だ!」

 それすらも効かず、妖魔は無傷で立っていた。


「クソ、どうすりゃいいんだよ!」

「タケル、アキナ! 今度は三人同時に技を放つぞ!」

「ああ、やってやるぜ!」

 タケル、イーセ、アキナが再び身構えた時


「フフフ、無駄だと言ってる……ギャアアアア!?」

 妖魔はいきなり真っ二つになった。


「な!? い、いったい何が起こったんだ!?」

 タケル達は突然の事に驚き叫んだ。


「ふん。後ろがガラ空きだったぞ、ワレ」


 そう言ったのは、銀色の髪に狼のような鋭い目つきの男だった。

 黒いジャケットに白いマントを羽織っていて、右手に剣を持っている。

 そして見た感じ歳は二十代後半、といった所か。


「え、えと。これ、あんたが?」

 タケルが驚きながら尋ねる。

「そうだ。こいつは大ボスクラスのようだな」

「それを一撃で……あの、あんたいったい」


「ああ。俺の名は、とその前に……はっ!」

 男がキリカとユイに向けて手をかざすと、


「え? これ、完全回復魔法!?」

「しかも二人同時に……す、凄い」

 二人は立ち上がってその効果に驚いていた。


「お嬢さん達も治った事だし名乗るか。俺の名はセフィトスだ」

 そしてその男、セフィトスはタケルを見つめ

「お前が神剣士だな。待っていたぞ」

「え、俺が神剣士だって知ってる? それに待っていたって、何で?」

 タケルが戸惑っていると

「ああ。それはお前達に稽古をつけてやる為だ。とある方の頼みでな」

「とある方って、もしかして最高神様?」

「速攻で当てるな! ってわかるわな、神託で聞いてるだろし」


「あ、あの、何故あなたは最高神様と」

 キリカがおそるおそる尋ねる。

「話が出来るか、ならこれは例外だとだけ言っておこう。では早速だがついて来い。俺の家に案内しよう」

「は、はい」



 その後セフィトスに連れられ、辿り着いた先は

「えーと、セフィトスさん?」

 タケルがおそるおそる話しかける。

「ん、何だ?」

「これが家?」

「何か文句あんのか、ワレ」

「……いえ」


 そこは今にも潰れそうな小さなオンボロ小屋だった。

「さ、入った入った」

 セフィトスが入口から促してきた。

「あ、はい。お邪魔します……え?」


 中に入るとそこは豪華な飾りがある大広間があり、両端に上へと続く階段、その間に大きな扉があった。

 どう見てもそこは小屋の中ではない。


「あの、これどういう事?」

 タケルは何が何だかわからずにいた。

「も、もしかしてここは異空間ですか?」

 キリカが思い当たって尋ねる。

「そうだ。ここなら妖魔も入って来ない。だから安心して修行に打ち込めるぞ」

「こんな異空間を作り出せるなんて、いったい」

「まあそれはいいだろ。さて、二階に寝室があるから使ってくれ。あと食堂と風呂はあっち。そしてそこの大扉の先が修行場だ。では早速行くか」


 大扉を開けるとそこは真っ白で何処までも続いているかのように広い空間だった。


「え~と、何もない?」

 タケルは首を傾げた。

「いや、ここでは修行に必要な物は何でも出てくるんだ」

「へ?」

「まあ見てろ」

 そう言ってセフィトスは目を瞑り、手をかざした。

 するとそこに鉄アレイやサンドバッグ、魔導書などが現れた。


「凄え! ホントに出た!」

 タケルは

「な、なあ、食べ物とかは出せるの?」

 アキナが興奮しながら尋ねる。

「ここでは出せんが食堂でならいくらでも出てくるぞ。まあそれは後だ」

 セフィトスがそう言った。



 そしてタケル達の修行が始まった。

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