第25話「あの星まで飛んでいきたい」
その後部屋に入り、それぞれ思い思いに過ごす事にした。
「ふう、たまには一人部屋ってのもいいか。さてと」
タケルは剣や防具の手入れをする事にした。
「この剣全然刃こぼれしないんだよなあ。たしかスサノオ様が使ってたって言ってたな、じいちゃんが」
タケルは自分の剣を見つめながら呟いた。
しばらく経った時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「はーい?」
扉を開けるとそこにいたのはナナだった。
「あのね~、もうすぐごはんだからね~。あとお風呂は近くに温泉があるからそこでね~」
ナナはそう言った後、フワフワと廊下を飛んでいった。
「ナナっていつも浮いてるのか? あれで魔法力が切れないのかよ?」
タケルは首を傾げていた。
そして皆が食堂に集まり、夕食となった。
出された献立は山の幸をふんだんに使った料理だった。
「うわ、めちゃ美味え!」
「ホントね。こんな美味しいもの初めて食べたわ」
タケル達はその料理に舌鼓を打った。
「ありがと~。それあたしが作ったんだよ~」
ナナは笑いながら言った。
「そ、そうなの? これをナナが?」
ユイは目を丸くして驚いていた。
「凄えぜナナ! これってプロの料理人が作ったみたいだぞ!」
アキナが賞賛の声をあげる。
「え、そうかな~?」
ナナは少し照れているようだった。
「本当に大したものだな。御老体はいいお孫さんをお持ちですね」
イーセが老人に話しかけると、彼はいやいやと首を横に振った。
「実はですね、ナナは儂の孫ではないんですじゃ」
「え、では?」
「詳しくは言えませんが、あの子は事情があって儂が預かっているのですよ」
「そ、それは失礼を」
イーセは慌てて謝罪した。
「いえいえ。儂は本当の孫の様に思ってますしの」
「そうですか。しかしナナは幼いのにしっかりしてるというか」
「いや、あの子はあれでも十四歳ですじゃ」
老人はナナを見つめながら言った。
「……ま、また失礼を」
「いえいえ。見ての通り幼く見えますので、それが心配の種ですわい」
「そうですか。でもすぐに大人っぽくなるかもしれませんよ」
「ほっほ。そうなってくれたら嬉しいのですがの」
その後
「ふう、いい湯だな~」
タケルはさっきナナが言ってた温泉に入っている。
露天風呂で仕切り壁がないので、タケルの後に女子達が入る事になっていた。
「しかしなあ、イーセも一緒に入ればいいのになあ」
イーセは軽く修行するから最後でいいと言って出て行った。
「まさか本当に俺を……ってそんな訳ないか。さて、そろそろ」
「あれ~、もう出るの~?」
「え?」
声がした方を見ると、そこにはナナがいた。
何も隠さずすっぽんぽんで。
「な、何でここにいるんだよ!?」
「あたしも温泉に入りたいな~と思って」
ナナは笑いながら言った。
「え、いやそれなら後でキリカ達と入れよ!」
「あたしは今入りたいの。それ~」
「うわあっ!?」
ナナは勢い良く温泉に飛び込んでタケルに寄り添った。
「あー、気持ちいい」
「あ、ああ(意外に胸おっきいな。それに毛は生えてない)」
このど変態少年はしっかりと見ていた。
その後しばらく話をしながら湯に浸かっていた。
するとナナが空を指さし
「ね~タケル、星が綺麗だよ~」
「え、おお!」
見るといつも空を覆う霧が晴れており、そこには満天の星空が広がっていた。
「あ~、あのお星様のとこまで飛んでいきたいな~」
ナナは空を見上げながら言う。
「はは、そりゃいくらなんでも無理だろ」
「今はそうだけどね~、でもいつかは行きたいな~」
「何で?」
「側で見たらもっと綺麗だろな~って」
ナナは満面の笑みを浮かべていた。
(あ、何かすっげえ可愛い)
タケルの頬が赤くなっているが、湯にのぼせたからではない。
その後しばらく何も言わず、ただ星空を眺めていた。
「あのさ、ナナ」
「な~に?」
「……行けるよ、きっと」
「うん。絶対行く」
「その時は俺も」
「ええ、逝かせてあげるわよ」
「え?」
振り向くとそこにはキリカ、アキナ、ユイがいた。
こっちは全員タオル巻いてる。
「もう出たかな、と思って来てみたら……ねえ~、何してたの?」
キリカの顔は般若のようになっていて、
「この変態野郎、覚悟はいいか~?」
アキナは指をボキボキ鳴らし、
「タケル、言ってくれたらわたしがいかせてあげるのに。手でも口でも」
ユイは何か違う事をほざいた。
「い、いや待て。俺は、ぎゃああーーーー!」
湯から引きずり出されたタケルはキリカとアキナに殴られ蹴られ、ユイに股間をグリグリ踏まれて昇天しそうになった。
「もー、せっかく二人でお星様見てたのに~、ぷんぷん」
ナナは頬を膨らませていた。
「フフフ、あの子、いいわね……よし」
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