第24話「魔女っ娘クルクル」
イーセを仲間に加えたタケル達は今日も順調に旅を続けていた。
その途中、並木道の木陰で休憩している時、タケルはイーセに話しかけた。
「なあ、いつも一人で夜遅くまで修行して朝も早いけど、大丈夫か?」
タケルが心配して言うが、イーセは「大丈夫だ」と首を振る。
「うーん。なあイーセ、何か隠してない?」
「……いや」
「フフフ、わたしは知っているわ」
ユイは黒い笑みを浮かべていた。
「な、なんだと!? いったい何を知っていると言うのだ!?」
イーセは明らかに狼狽えている。
「修行なんて嘘。実は毎夜こっそりタケルの裸を想像しては自分を慰め」
ドゴオッ!
「気色悪い事言うな!」
タケルがユイの頭を思いっきりどついた。
「痛い。うう、こうやってわたしを調教して奴隷にしようと」
「誰がそんな事するかー!」
「でもそれもいいかも……はあはあ」
ユイは光悦の表情になって悶え始めた。
「ギャアー! こ、こいつ変態だー!」
「あれは放っときましょ。ねえ、何か言えない事があるの? 私達にも話せないの?」
キリカが心配そうにイーセに尋ねる。
「……いずれ時が来たら話す」
イーセは申し訳ないとばかりに頭を下げた。
「そう、わかったわ。さ、この話は一旦おしまいという事で」
「ああ、ありがとう」
その時、
あ~れ~!
「は? なんだこの声?」
「あっちから聞こえたぜ、行ってみよう!」
アキナが声のした方へと走って行くので他の皆も後を追った。
「あ~れ~!」
そこでは桃色の髪をボブカットにしているミニスカ魔女っ子衣装の少女がクルクルと回っていた。
だからスカートが捲れてぱんつ丸見えである。
「なあ、アレなんだろ?」
アキナが彼女を指さしながら言う。
「知らないわよ。あ、タケルとイーセは見ちゃダメよ」
「キリカ、黙って通り過ぎよ」
女子三人が話していると
「あれ、あんた達誰~?」
少女が気づいて話しかけてきた。クルクル回ったままで。
「あ、あなたこそ誰よ?」
キリカは引き気味に尋ねる。
「あたしはナナよ~、あ~れ~!」
少女、ナナはやはりクルクル回ったまま名乗った。
「あの、とりあえず止まってくれない?」
「うん、いいよ~」
ナナは回るのをやめた。
「ねえ、あなた何してたの?」
「一人帯回し~」
ナナは笑いながら言う。
「何で?」
「暇だったし楽しいから~」
「えーと……」
キリカは何と言っていいかわからなかった。
その後タケルとイーセもナナの方を向き、全員軽く自己紹介した。
「なあ、ナナってこの辺に住んでるのか?」
タケルが尋ねると
「そうだよ~。この先にある宿屋があたしのお家~」
「お。なあ、俺達旅の途中なんだけど、部屋は空いてる?」
「空いてるよ~。じゃ、案内するね~」
そう言った途端ナナはタケルの頭上に浮いた。
「え!?」
タケルはナナを見上げ、思わず声を上げた。
「さ、こっちだよ~」
ナナはフワフワと浮きながら先に行った。
「え、え? 浮遊魔法をあんな軽々と出来るなんて」
「わたしもあんなふうには飛べない。あの子って何者?」
キリカとユイもナナの実力に驚いていた。
「うーん」
「どうしたんだよ、タケル?」
アキナが何か考えこんでいるタケルに尋ねる。
「うさぎ柄のぱんつか、やっぱ子供だな」
ズガアッ!
アキナはタケルに伝説のウルトラタイガード◯ップを喰らわせた。
その後ナナに案内されて着いた場所は、古ぼけてはいるがどこか趣きのある宿屋だった。
「ここだよ~。さ、どうぞ~」
中に入るとカウンターがあったが、誰もいなかった。
「ただいま~」
すると奥から白髪で痩せ型で背の低い老人が出てきた。
「おかえり。おや、そちらの方達は?」
「お客様だよ~」
「すみません。ちょっとこの子に宿屋があると聞いたんで」
キリカが代表して言った。
「ああ、お泊りですね。今日は他に誰もいませんから一人一部屋ずつでも結構ですわい。それとお代はこんなもんで」
老人はカウンターに置いてあった紙にサラサラと明細を書いて渡した。
「え、こんな安くていいんですか?」
それは相場の半分程であった。
「ええ。ここはほとんどワシの趣味でやってますからのう」
老人は顔に笑みを浮かべて言った。
「ありがとうございます。じゃあお願いします」
そしてナナが部屋へと案内した。
「ねえ、ここにいるのはあなたとおじいさんだけ?」
キリカがナナに尋ねる。
「うん。そうだよ~。今日は久しぶりのお客様~」
「え? あの、ここってもしかして普段から」
「うん、あまり人が来ないの」
ナナは少し寂しそうな表情になった。
「まあ、このような場所では人が通りかからんだろうからな」
イーセが辺りを思い出して呟く。
「だからあたしがあちこちで宣伝してくるって言ったんだけど、おじいちゃんはのんびりやりたいから要らないって」
「うーん、それは人それぞれだけどさ、なんか勿体無いよな~」
アキナが腕組みしながら言う。
「え、何で?」
タケルが尋ねると
「いやさ、ここって静かで雰囲気のいい場所だろ。これなら町に疲れた人達がいっぱい来そうだと思ってさ。まあ平和だったらだけど」
「そんなもんか? じゃあうちも山奥で緑が綺麗だし、宿屋でもやったらいけるかな?」
タケルは腕を組みながら言うと
「それならわたしは女将さんやる。タケル、二人で宿を切り盛りしよ」
ユイがそう言ってタケルの腕に寄り添った。
「ユイ? それは私が」
「キリカは大好きなお兄さんとすればいい」
「あ、そうね。兄ちゃんと……そして、うふふ~♡」
キリカは悶えながら妄想の世界へと旅立った。
「キャハハ、この人達おもしろーい!」
それを見たナナはケラケラ笑っていた。
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