ドラム缶男の友達

真生麻稀哉(シンノウマキヤ)

第1話

僕は、「憤上悦也」(ふんがみえつや)といいます。


今、ドラム缶の中にいます。


ドラム缶ごと車の後部座席に積まれています。

窓には黒いシートが貼られて、外の様子は見えません。


車が走ったり、信号待ちで止まるのに合わせて、


ちゃっぷん。


車に積まれたポリタンクの中の液体が音を立てます。


車の中にはいろんな臭いがします。


重クロム酸ソーダ、濃硫酸、塩酸、ガソリン、コンクリート・・・。


でも、ドラムの鉄くさい錆びた匂いが、一番強くします。


車を運転しているのは、僕の友達の葛西空介(かさいくうすけ)くんです。


僕たちは小さい頃からの友達です。


大丈夫。


これは、遊びです。


何にも危ないことなんてありません。



葛西空介くんは友達です。


ほんとです。

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