第9話

【モノクロ写真・7枚目】


白い大きな建物の前


少年兵が、焚き火を見つめている。


焚き火の薪に混じって、肩から切り離された細い腕、腿のところと膝のところで切断された足、

すべての臓器を抜き取られた空洞の胴が、もくもくと白い煙を上げて燃えている。


それから顔の皮膚を剥がされ、顔筋がむき出しになった頭蓋骨が、少年兵の足元に転がっている。目玉はくり抜かれて生理食塩水に沈められた。だから、ぽっかりと空洞だ。


焚き火のそば、今にも火が燃え移りそうな、そのすぐそばに白い革のボールが転がっている。

炎がボールを照らし、浮き上がる影。

それは幼い子どものデスマスクのようだ。



この写真を見た人は、全員が思う。


まさか、このボールは、人の皮でできているのか?

戦時中ドイツのアウシュビッツに、人の皮で作ったランプシェードや手袋があったように。

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